【忍たま】忍術学園の事務員補佐になってしまった,,,二

第八十六話 ページ38

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「...い、おい。起きろ、A。」


『んぅ、ん？...立、花さん？』


目を開ければ、前髪の隙間から渋い緑色と艶のある髪が見えた。

...あれ、あの部屋じゃ、ない？それになんか、やけに距離近くない？

とくんとくん、と心音が聞こえる。これは私じゃない、立花さんだ。

しかも立花さんの火薬の独特な臭いが鼻腔をくすぐる。

いつもだったらよっぽど近づかなきゃ臭わないのに。徐々に目覚める意識。


『ん？んん？』


妙に近い距離、背中と膝裏に回ってる暖かい感覚、安心感のある浮遊感。

いや、これは...ま、まさか...。お姫様だっこ！？お姫様だっこされてる！？


「どうした。」


『ふぇ、あ、いや。なんでも...ないです。』


気づいてしまった事実に震えて、立花さんに心配される。

いやいやいやいや、嘘...。お姫様だっこなんて、前世でも今世でも初めてなのに...。

あまりの驚きで背中に宇宙を背負う。

はっ、いやそんなこと考えてる場合じゃない...！

が、すぐに現実に戻り立花さんに向かって言った。


『たっ、立花さん。お、下ろして、く、くだ、さい...。』


「...そうだな。もう着いたしな。」


恥ずかしさで言葉がぶつ切りになってしまう。

立花さんはそんな私の様子を見て、ここだろ？と静かに下ろしてくれた。

周りをよく見ると、寝る前から結構

時間は経っているみたいで空がオレンジ色になっていた。夕方だ。

え？目を閉じちゃうなって思って目を開けたらこれだったんだけど。え？

だとしたらこの時間で秒で起きたような気になったということになる。

...まさかの熟睡？(正解)

全然できないーみたいなことを言ってなかったっけ？(それも正解)

あれ？んん？？


「...じゃあな。」


考えることに更けていると、立花さんの声が聞こえて思わず振り返った。

そこには彼の姿は無く、ただ風が吹いていた。

帰っちゃったの...？えぇ...。

流石、忍者...と思いつつ、感謝の言葉を述べていなかったに気付く。

慌てて言おうとして、止めた。


『っ...。......はぁ。』


ここは五年長屋。五年生の人がいるかもしれない、迷惑になる。

また今度にしよう。そう思っていたらまた後ろから声をかけられた。

ここの人達は背後に現れるのが常識なの！？


「ねぇ。何してんの。」


『ひょっ！...ぁ、尾浜さん。』


何ですか、とジト目で言う。けれど、尾浜さんは同じこと言った。


「何、してんの。」

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