【忍たま】忍術学園の事務員補佐になってしまった,,,二

第八十五話 ページ37

この男だらけの学園で居眠りとか、腹を見せて寝る野良猫みたい。

ただ、間違ってもこいつにそんな気を起こすやつなんて

いないだろうけど。


綾部は彼女が嫌いだ。もうお気づきだろうが、大量の落とし穴という名の

嫌がらせをしているのは綾部喜八郎本人である。

自分の落とし穴を馬鹿にされ分かりやすく怒っているのだ。

その怒っていることに気づいていないのは彼女だけ。周りは彼女に警戒しまくる綾部に

何かあったんだ...と察し、触れないことにしている。

周りは面倒くさいことに関わりたくなかった。

立花は知っていた、食満から伝えられたからだ。

ある晩に彼女の事でいつものように集まったときのこと。


「あー、お前ら。その、だな...。」


「なんだ、モジモジして気色悪い。」


言っていいものかと、いや言わなきゃ後々面倒くさくなるかと

考える食満に悪びれもなく辛辣なことを言う立花。

その一言で遠慮も配慮も要らないと思った食満は

けっ、と悪態をつきながらも六年生全員に二人のことを話した。


それからは子供の喧嘩を見守る母のように二人を見ている。

何があったのか、それこそ最初は聞こうとしていたし興味があった。

綾部のAに対するあの目、Aに何かされたか？

あの綾部がここまでわかりやすく怒るのだ、相当なことをされたに違いない。

Aはというと...何も反応していない。

気づいていないのか、まさか無意識？

だが、日に日に余裕を無くしていく綾部を見て

自ら首を突っ込んでかき回さずとも、勝手に面白くなっていく

と判断して、それからは見るだけにしている。

立花はそういう人間だった。


話は戻って、綾部が口を開く。


「立花先輩。今日はもうやめません？」


はぁ、とため息混じりに言う綾部に立花はそうだなと頷いた。

他の生徒は用事があって遅れたりして

集まれたのはこの三人だけだったからである。


「こいつだって寝てるし。」


「...そんなに急ぐこともないしな。

じゃあ今日は解散。綾部は他の委員に伝えてきてくれ。」


はーいと気の抜けた返事をして綾部は部屋を出ていく。

立花はそれを見て、自分も出ようとした。


『すぅ、すぅ。』


「...あ。」


そうだ、Aがいた。

Aを起こそうと手を伸ばし、はたと気づく。

今ここにいるのは自分とAだけ。そう二人だけ、だ。

誰の目もない。つまり








こいつの素顔を見るのは今しかない。

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