Dear.絶対エース【1】 (ページ43)

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43.♯ ページ43

「大事なものなのよねー、あれないとあたし生きてけないしー」

大「…見てません」

「えーマジで？本当に無かったの？
嘘でしょー涼介が準備してないって事無いし。
電話も出ないしあいつ何してんの。
まあ、いいわ。見つけたらあたしに教えてねー」

大「あ…ハイ」

「これあたしの連絡先。
じゃ、よろしくー」

大ちゃんに連絡先を渡した女はようやく山田ん家から出て行った。

嵐が一瞬にして過ぎ去ったような感じ。

大「こんなんいらねえっつーの！！！」

貰った紙をグシャグシャに丸め投げ捨てた大ちゃん。

普段あんなに温厚なのに怒っているのが見てわかる。

伊「…裕翔はどうしたの？」

裕「ごめん…引き止められなくて。
何か、急に、一瞬ビリってきて力抜けちゃった」

薮「………スタンガン。
あの女、ケータイみたいなのをバックに入れるのが見えた」

光「スタンガンって…まじかよ」

普通、そんなもの持ち歩く？

あの女、結構ヤバいんじゃ。

高「……山田の顔見ても何も言わなかったね」

裕「やっぱり育児放棄してたから山の顔なんて覚えてないんだよ。山、かわいそう」

大「金持ちとか…封筒って…、山田はあの女にお金渡してんのかな…」

光「にしてもあの額はねえよな」

薮「あれが山田の母親だとか思いたくねーよ…」

それは俺も同感。

一連の流れを見て分かった事。

山田は母親に金を渡している。

母親は山田の事金づるとしか思っていない。

虐待…は無いにしろ、山田はこの歳まで自分の親に振り回されて生きてきたって事。

あんなにいつも笑顔で、

人一倍努力して、

自分よりも他人を想う事の方が多い山田が…、

誰よりも苦しい状況にいたなんて。

高「伊野尾くん大丈夫？」

伊「え…？」

高「泣いてる」

自分の頬に手を当てて気づいた。

俺、泣いてる。

自分で言うのも何だが、滅多に泣かない俺が。

伊「俺…山田もJUMPも大好きだから…悲しい」

大「伊野尾ちゃん…」

涼「んぅ……」

高木の腕の中にいる山田が起きた。

涼「いのちゃん…ないてる」

伊「山田…」

涼「いのちゃんないてると…りょうもいたいよ。なかないで、だいじょーぶ」

山田が小さい手で俺の頭を撫でる。

泣いちゃいけないのに、何故だか余計に涙が溢れ出た。

伊「山田…」

俺の顔が見えないように山田をギュッと抱きしめた。