気まずい関係 ページ41
沖田side
·
Aさんは、ふう、と息をついた。
清水寺までの坂の勾配はそれなりにある。特になんとも感じていなかったが、女性のAさんにとったらそれなりに坂はきついかもしれない、という考えが今更浮かんだ。
「大丈夫、ですかィ?」
『はい、すみませ…』
──その時、Aさんが足を滑らせた。
『うわっ』
反射的に、彼女の手を掴んでいた。
『ご、ごめんなさい』
Aさんはバランスを取り戻し、しっかりと地面を踏みしめた。自然と視線がかち合って、なんとなく少し逸らす。Aさんの着物の裾が揺れる。
『…あの、手…』
「あ、すいやせん」
未だに彼女の手を握っていたことに気づき、そっと温もりを離す。
ああ、まただ。
転びかけた相手に、手を差し伸べること自体は別にどうってことないだろう。でも、その後も彼女の手を離さないままでいた。
…まったく、意識していなかったのに。
こんなこと、今まで無かった。
暴挙の一途をたどる俺の無意識は、とどまることを知らないらしい。
「…行きま、すか」
『は、はい』
なんだか気まずい空気というか、緊張した空気が残ったまま、俺とAさんは坂を登る。なぜかAさんは胸に手を当てており、そんなに心臓あがったのか、と聞きたくなったがやめておくことにした。
***
『これが有名な清水の舞台…!』
まあ、人気観光地を前に、その空気が残ることも無く。
Aさんは手すりの外に手を出してひらひらと振っている。
山の緑や遠くに見える塔、抜けていく風。
いわゆる【清水の舞台】に登ってきた俺たちは、見える景色を堪能していた。
「思ってたよりだいぶ高ぇや。おちたらどうなるんですかね」
『怖いこと言わないでくださいよ…』
手すりから身を乗り出して真下を見てみる。結構な高さだ。もし落ちたら、チャイナ娘やチンピラシータならまだしも、ただの人間ではかなりの確率で怪我をするだろう。
『そうだ、あの』
ひたすら景色を眺めていたAさんが、俺の方を向いた。
『よかったら、写真…一緒に、撮りません?』
Aさんはスマートフォンを取りだし、恐る恐るといった調子で尋ねてきた。何をそんなに恐れているのかか。
「いいですぜ、撮りやしょう」
『ありがとうございます!』
過剰なくらいにっこりと笑みをうかべるAさん。そこまで、喜ぶことではない気もするが。
そういや、たまにAさんの反応が大袈裟な時が増えたかもしれない、なんて思った。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます。 (2019年10月25日 23時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - と〜っても面白いです!更新頑張ってください! (2019年10月25日 19時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます!嬉しい限りです。マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします! (2019年10月19日 18時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - とっても面白いです!無理矢理原作に沿っていなくて,とても読みやすいです!更新頑張ってください! (2019年10月19日 16時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年8月25日 22時