検索窓
今日:1 hit、昨日:17 hit、合計:75,839 hit

夜風の関係 ページ21

Aside
·

『沖田さん、サボり魔ですよね…』

「至って真面目でさァ」

風が、川の表面を撫ぜていく。
いつかの作戦(デート)で歩いた道。夕暮れの道。
沖田さんも同じことを思い出したのか、くすりと笑いをこぼす。

『奇行に走ってましたね、私』

あの時は、ただ必死だった。目の前にいる彼と、自分を救いたくて。まとわりつくような何かを振り払いたくて。
やってよかったとは、思うけど。奇行だった。

「いや、まあ」

遠くで喧騒が聞こえる。お祭りの冷めていない興奮が、ここまで伝わってくるよう。


「奇行だけど。あん時、Aさんに、助けられたんで」

沖田さんはゆるく首を振る。
…自分のどこかが酷く熱を持った気がする。
彼が好きだと気づいてしまってから、この熱は短時間で募るばかりだ。

「だから、ありがとうございやした」

にこり、と。
沖田さんは、これまた綺麗な笑顔を見せた。
ああ、ちゃんと自覚しただけで、こんなに意識してしまうものなのか。じわじわと、波のようなものが背中をのぼる。

『い、いえ。…そう思ってくれたなら、嬉しいです』

宥めるのにいっぱいいっぱいだ。
世の中の女子はみんなこんな感情を抱いているのだろうか。なんて凄まじい。
彼の言葉や行動や、表情が、こんなに自分を揺らすものだとは思ってなかった。
これが、恋、なんだ。はあ、とため息をつきたくもなってしまう。


『…沖田さんも、お祭り、楽しめました?』

仕事があったとはいえ、雰囲気を楽しむことは出来ただろうか。花火を、味わうことは出来たかな。ふと気になって、私は沖田さんに聞いてみる。

「毎年出てますけど、楽しめやした。今年も」

風が、私たちの間を通り抜ける。
拳ひとつ分くらい、絶妙に離れた距離を。

『よかったですね。来年も来れたらいいなあ』

来年。
一年後の自分がどうなってるかなんて皆目検討もつかなくて、私と沖田さんがまだ一緒にいるかどうかも分からない。私が、この感情をどうするかも。
でも。
次の年も、沖田さんの隣で花火を見られたら。
沖田さんの笑顔が、隣で見られたら。
それは、すごく素晴らしいことだと思うのだ。

「来年、か」

そのニュアンスが沖田さんに伝わっているかどうかは分からない。
ほとんど星の見えない夜空。さっきまで花火が咲いていた空。
沖田さんは、そこに顔を向ける。


「ですね。また、次の年も」

『はい』


心地よい風が、ふわりとまた私達を包む。
私も夜空を見つめながら、来年を願った。

自覚した関係→←綺麗な関係



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (43 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
106人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 沖田
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます。 (2019年10月25日 23時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - と〜っても面白いです!更新頑張ってください! (2019年10月25日 19時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます!嬉しい限りです。マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします! (2019年10月19日 18時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - とっても面白いです!無理矢理原作に沿っていなくて,とても読みやすいです!更新頑張ってください! (2019年10月19日 16時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/  
作成日時:2019年8月25日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。