ホ ン イ 4 ページ4
Aside
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食堂への道とは真反対方向にずんずん進む高杉先輩。廊下の真ん中をかき分けていくものだから、ぎょっとした視線が集まる。
『やめてくださいよ、ちょっと』
強く掴まれた腕は離されることもなく。
やがて先輩は誰もいない中庭で立ち止まった。
「…」
無言を貫いているから怖い。
雨の時に見た先輩の姿にも似ている。
高杉先輩は私に向き直った。逆光で表情がよく見えない。
「俺にはてめェがいる」
『は?』
唐突に呟かれた言葉。まるで何かを読んでいるかのように、平坦な言葉。
いつも分からない先輩の真意がもっとわからなくて、私は眉をひそめた。
そしてまだ手を離してくれない。
「俺はお前のものだ。ついでにお前も俺のものだ」
『何ですかのジャイアンみたいな意味わかんない言葉は』
私が先輩のもの?先輩が私のもの?
「そのまんまの意味だ。俺はお前以外のものになる気は無い」
そのまんま、とは。所有物、なのか、あるいは、
『…は』
__思考は突然中断された。
他ならぬ、高杉晋助先輩によって。
彼は、私の肩に頭を預けていた。重みと熱が遅れて伝わる。細い髪の毛が首をくすぐる。微かに先輩が顔を動かして、その振動が伝わる。
自分の中で一気に熱が駆け巡った。
なにこれ、なにこれ。
「なァ、まだ伝わんねぇのか?」
むくりと顔を上げ、私を見てにやりと笑う先輩。あまりに近い距離に、思わず一歩後ずさる。
『あの』
「とっとと俺のモンだって認めろ」
こっちだって持たねえよ。
高杉先輩の甘い言葉に甘い声。
頭の中でぐるぐる回る。
『…は、い』
思わず口から零れた言葉。
高杉先輩は笑みを深め、言ったな?と私の唇をつまむ。
「絶対忘れんなよ」
『…んぅ』
彼の熱視線から逃れられない。自分の心臓がばくばく音を立てる。
なにこれ、なにこれ、なにこれ。
こんな状況で頷けない訳が無い。
でも、私は、私のものだ。高杉先輩のものじゃないし、きっと先輩が私に期待してるような感情は持ち合わせてないし、それに、それに。
ひた、と頬に両手が当てられる。
肩が跳ねたのが自分でわかった。
「ずいぶんと熱いなァ」
嫌なら、突き放せばいいのに。
今まで通り、離れてくれと言えばいいだけだ。
彼の力は、さっき私の腕を掴んでいた時よりずっと弱い。逃げられるはずなのに。
断れない。逃げられない。
__どうやら、私は本当に先輩のものになってしまったようで。
なにこれ、と今度は呟く。
その呟きは、先輩の唇で塞がれた。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 氷華さん» ありがとうございます!嬉しい限りです! (2019年12月25日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
氷華 - 神威君ーーーーーーーーー! この小説いいね♪ (2019年12月25日 12時) (レス) id: e5c89771f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月27日 1時