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ツ ヅ キ 3 ページ29

Aside
·

『懐かしいね』

あらゆるところを通る度、記憶が蘇る。
まるで隣をかつての自分たちが通り過ぎていっているかのようだ。
__そしていつもそこには、十四郎がいた。


「お前、覚えてるか」

ふと食堂前の廊下に目をやって、十四郎はつぶやく。

「初めてあった時のこと」

考えていたのは同じことのようだ。私は頷く。

『そっちこそ、覚えてたんだ』

「当たり前だろ」

十四郎はふっと笑いを零した。その仕草がとても様になっていて、思わず私はどきんとしてしまう。学生時代をすごした場所に戻って、心まで当時に戻ったのだろうか。この校舎で、こんな風に十四郎に見とれた事が何度あったことか。
私はそれを悟られないように、視線を食堂に向けた。


***


「Aちゃん、一緒にお昼食べようヨ」

高校に入学したての頃だった。神楽はまだ私をAちゃんと呼んでいて、私も神楽ちゃんなんて呼んでいた。部活動の仮入部で居合わせ、少し会話を交わすようになり、お昼ご飯を食べないかと誘われたのだ。
私はまだお昼を一緒に食べるような友達をクラス内でつくれていなくて、だから神楽からのお誘いはありがたく嬉しかったのを覚えている。

『うん、食べよう』

そう応えると、眼鏡越しの神楽の目が輝いた。

「おう!こいつらも一緒だけどいいカ?」

『…ん?』

神楽ちゃんの後ろで、何人かのクラスメイトが喋っていて。まあ、お妙とか九ちゃんとか新八とかだったんだけど、私はほとんど会話もしたことがない級友とお昼を共にするなんていうスキルはなく、だいぶ焦った。
神楽は明るくて物怖じしない子だ。すぐに友達を沢山作ったのは明白で、私が断れるはずもなく。

『だ、大丈夫だよ』

「よかった、じゃあ食堂行くアル」

ぞろぞろと教室を出て大移動。この時初めて志村姉弟と喋り、話しやすく楽しいクラスメイトだということがわかった。これならお昼ご飯も安心だ、と思っていた、が。


『…えええ』

食堂前の廊下はかなりの人でごったがえしていて、気づいたら神楽やお妙たちともはぐれていた。入学したばっかで、人混みを書き分ける勇気もなく右往左往。とりあえず食堂内に入ろうと一歩を踏み出した途端、足を滑らせた。

『いてて』

地味に尻もちをついて床に座り込む。ダサい。慌てて立ち上がった途端、今度は人にぶつかった。

『あ、ごめんなさい』

「…いや」


今思えば、少女漫画のような出会い。


__この時ぶつかった相手が、土方十四郎だったのだ。

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みるくれーぷあいす(プロフ) - 氷華さん» ありがとうございます!嬉しい限りです! (2019年12月25日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
氷華 - 神威君ーーーーーーーーー! この小説いいね♪ (2019年12月25日 12時) (レス) id: e5c89771f4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月27日 1時

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