チ ョ コ 4 ページ24
Aside
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『なんですか』
やる気のなさそうな担任は私に五冊の本を手渡してくる。
「あのさぁ、これ、図書室の本なんだけど。棚に戻してきてくんねーか?」
いや、自分でやれよ、という心の中のツッコミが聞こえたのか、担任は「いやお前図書委員だし?これ、貸出期間過ぎても返さない奴らから回収したやつだし?いいじゃん手伝ってくれよ」と図書室の鍵とともに押し付けてくる。
『わかりましたよ』
仕方なく受け取り、荷物を持って椅子から立ち上がる。
「お、じゃあよろしく頼むわ」
教室を出る途中、また総悟に視線を向けた。
あたしの方なんて見向きもせず、ゴリやマヨたちと喋っている。
…渡さない方が、いい。
あたしはすぐに目を逸らし、廊下を足早に歩いた。
***
『え、歴史書?こんなの場所知らない…』
たった五冊だし、十五分くらいで棚に片付け終わるだろう、という目算はだいぶ誤っていた。
3年Z組の生徒はほぼ使わないけど、銀魂高校の図書室は広く、蔵書量も多い。よって、何がどこにあるか全然わからないのだ。あたしが図書委員になったのは余っていたからで、普段馴染みのない場所で本の置き場所を探し回るというのは想像以上に大変な作業だった。
『もうこんな時間…』
気づけば図書室に入ってから三十分近くが経過していた。まだ片付けていない本は三冊残っている。めんどうくさい。早く片付けて、早く帰ろう。総悟へのチョコなんて、自分で食べてやる。いっそ中身だけ面倒な仕事を命じてきた担任にでも渡しちゃおうか。
ああ、なんてみじめ。
『…うう、寒』
エアコンはつけていなかった。暖房、やっぱり入れた方がいいかもしれない。
そう思って、エアコンの操作パネルがある窓際まで向かうことにした。
が。
『うわあっ』
突然足元が滑った。
何かを踏みつけてしまったようで、体が一気に前に傾く。目の前をさっきまで持っていた本が舞う。
きたる衝撃に備えて、反射的に目をつぶる。
その時、がしっと体が後ろに引かれた。
「ったく、危なっかしい奴」
驚いて後ろを見ると__総悟が立っていた。
『え?』
どうやら私の体を引っ張って、転ぶのを防いでくれたらしい。
『ご、ごめん』
「銀八から聞いた。本片付けんだろィ?手伝ってやりまさァ」
総悟がこんな申し出をしてくるのは珍しくて、あたしはぎこちなく頷いた。
二人で腰をかがめ、さっき落とした本を拾い上げる。思いがけず二人の時間ができたことに、戸惑いと嬉しさを覚えながら。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 氷華さん» ありがとうございます!嬉しい限りです! (2019年12月25日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
氷華 - 神威君ーーーーーーーーー! この小説いいね♪ (2019年12月25日 12時) (レス) id: e5c89771f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月27日 1時