検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:26,659 hit

オ ウ セ 2 ページ12

Aside
·

お皿をひっぱった拍子に、揚げパンが宙に舞って。
私の叫びも虚しく、パンは教室の床に落下した。

『そんなぁ』

「あーりゃりゃ」

がっくりと肩を落とす私に対し、神威は全く気にも留めていない様子だ。

「残念だね」

『全然そう思ってない…』

神威はひらひらと体を振りながら自分の席に着く。そこで、クラス中の注目を浴びていることに気づいて恥ずかしくなった。

「あはは、君、面白いね」

私も席に戻ると、神威は隣で笑みを深めていた。
なんなんだ、この人。

『…面白くないし』

馬鹿にされているような気がして睨むと、今後は声に出して笑った。


これ以降、私は神威とよく話すようになり。
3年間クラスも一緒だったから、一番仲の良い男友達になった。
そう、当時は男友達だったのだ。

「見てよA、制服のボタンぜーんぶなくなっちゃった」

『へー、神威のことを好きな物好きもいるんだね』

「ひっど」

中学の卒業式の日。
神威は無邪気に制服を見せびらかしてきて。心から、物好きがいるんだなあなんて思ってて。
高校は別々で、きっと進路も違って。
それでも、なんとなく、このまま仲良くし続けるんだろうなんて、浅はかに考えていて。
だから、まともにバイバイも言わず、私は家に帰った。


***


『かき氷といえばいちごでしょ』

「何言ってんの、メロンだよ」

『メロンなんて邪道でしょ』

「いちごの方が軟派だね」

よかった、まだ軽口を叩き会えるくらいの関係にはあるようだ。
…私が神威に告白したら、この、軽く言い合えるような関係も、終わってしまうのだろうか。
せっかくまた話すことが出来たのに、また離れてしまうことになったら。
思わず足が止まる。

だめ、決めてきたんだから。
高校の3年間、あんなに痛感したじゃないか。
神威が好きだってことを。
一緒にいたいってことを。

「A?」

『あ、ごめん』

隣にいたはずの神威はいつの間にか私の少し先にいて、慌てて追いかけた。
見上げる高さがぐっと上がっていることに気づいて、神威の背が伸びていることを知る。

「人多いし、はぐれるよ」

『大丈夫、毎年来てるし』

ここは地元だし、迷子にはならないだろう。
しかし神威は、むっと眉根を寄せた。

「A、かなり方向音痴じゃなかったっけ」

覚えてたんだ。
私のどうでもいいような特徴。
少しくらい、彼も私のことを考えている時間があったのだろうか。

『…はい、そうでした』


「全くもう。離れないでよ」

オ ウ セ 3→←オ ウ セ《神威》



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (31 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
44人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 短編集 , 3Z
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

みるくれーぷあいす(プロフ) - 氷華さん» ありがとうございます!嬉しい限りです! (2019年12月25日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
氷華 - 神威君ーーーーーーーーー! この小説いいね♪ (2019年12月25日 12時) (レス) id: e5c89771f4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月27日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。