オ ウ セ 2 ページ12
Aside
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お皿をひっぱった拍子に、揚げパンが宙に舞って。
私の叫びも虚しく、パンは教室の床に落下した。
『そんなぁ』
「あーりゃりゃ」
がっくりと肩を落とす私に対し、神威は全く気にも留めていない様子だ。
「残念だね」
『全然そう思ってない…』
神威はひらひらと体を振りながら自分の席に着く。そこで、クラス中の注目を浴びていることに気づいて恥ずかしくなった。
「あはは、君、面白いね」
私も席に戻ると、神威は隣で笑みを深めていた。
なんなんだ、この人。
『…面白くないし』
馬鹿にされているような気がして睨むと、今後は声に出して笑った。
これ以降、私は神威とよく話すようになり。
3年間クラスも一緒だったから、一番仲の良い男友達になった。
そう、当時は男友達だったのだ。
「見てよA、制服のボタンぜーんぶなくなっちゃった」
『へー、神威のことを好きな物好きもいるんだね』
「ひっど」
中学の卒業式の日。
神威は無邪気に制服を見せびらかしてきて。心から、物好きがいるんだなあなんて思ってて。
高校は別々で、きっと進路も違って。
それでも、なんとなく、このまま仲良くし続けるんだろうなんて、浅はかに考えていて。
だから、まともにバイバイも言わず、私は家に帰った。
***
『かき氷といえばいちごでしょ』
「何言ってんの、メロンだよ」
『メロンなんて邪道でしょ』
「いちごの方が軟派だね」
よかった、まだ軽口を叩き会えるくらいの関係にはあるようだ。
…私が神威に告白したら、この、軽く言い合えるような関係も、終わってしまうのだろうか。
せっかくまた話すことが出来たのに、また離れてしまうことになったら。
思わず足が止まる。
だめ、決めてきたんだから。
高校の3年間、あんなに痛感したじゃないか。
神威が好きだってことを。
一緒にいたいってことを。
「A?」
『あ、ごめん』
隣にいたはずの神威はいつの間にか私の少し先にいて、慌てて追いかけた。
見上げる高さがぐっと上がっていることに気づいて、神威の背が伸びていることを知る。
「人多いし、はぐれるよ」
『大丈夫、毎年来てるし』
ここは地元だし、迷子にはならないだろう。
しかし神威は、むっと眉根を寄せた。
「A、かなり方向音痴じゃなかったっけ」
覚えてたんだ。
私のどうでもいいような特徴。
少しくらい、彼も私のことを考えている時間があったのだろうか。
『…はい、そうでした』
「全くもう。離れないでよ」
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 氷華さん» ありがとうございます!嬉しい限りです! (2019年12月25日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
氷華 - 神威君ーーーーーーーーー! この小説いいね♪ (2019年12月25日 12時) (レス) id: e5c89771f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月27日 1時