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貪欲な関係 ページ5

Aside
·

『…沖田さん?』

沖田さんがなぜかベッドの方を見つめたまま固まってしまったので、顔を伺い見る。どうしたんだろう。

「…俺ってとんでもない馬鹿なのかもしれない」

『…はい?』

沖田さんはぐるぐると首を振ったあと、「いえ、なんでもないです。気にしないでくだせェ、マジで」と咳払いをした。
そう言われると、余計に気になってしまう。
なんだろう。

預けた荷物はもう既に部屋に届けられていた。
開けて、お土産を詰めたりものを取り出したり、整理をする。こういう作業をしていると、もう旅行も終わってしまうのか、という寂寥感が込み上げてくる。
あっという間の一日だった。きっと今夜も明日も、すぐに終わっちゃうんだろう。

…沖田さんとこんなにも長い間一緒にいるのは、久しぶりだ。
好きな人と同じ家に住んで、寝食を共にしているのだ。世の恋する乙女に比べて、かなり贅沢な経験をしている、と思っていたけど。
いざ、それ以上の体験をしてしまうと、まだこの時間が続いて欲しい、なんて考えが浮かぶ。
…貪欲な。
恋愛を経験すると、みんなこうなるのだろうか。
満足、してたはずなのに。
どんどんどんどん、望みが大きくなっていって。

ああ、ほんとうに、貪欲。


『…私も、馬鹿かもしれないです』

「…なにが?」

思わず、口から言葉が零れた。


***

『おいしかったですね。お腹いっぱい』

「さすが高級ホテルって感じでしたね」

夕食はビュッフェ式で、私たちは好きな物をたらふく食べることが出来た。
どれも本当に美味。京都の食材を使っているものもあるらしかった。ちなみに、沖田さんは初めて湯葉を食べたそうで、「新感覚でィ…」と呟いていた。

どくどくと、心臓が鳴る。
旅行の夜独特の高揚感と、沖田さんへのドキドキが、混じりあって、高まる。
熱に浮かされたような心地になって、私はぐっと拳を握った。
やわらかな照明が、沖田さんの綺麗な栗色の髪を照らしている。


『あ、あの』

気づいたら、沖田さんに話しかけていて。

「…なんですかィ」

でも、この気分を上手く言葉にできなくて、えっと、と口ごもった。
沖田さんは不思議そうな顔をして、首を僅かに傾げる。

『あ、あの!食後の散歩にでも行きませんか!』

…何を言っているんだ?と我に返ったのは、意味のわからないことを口走ってからだった。
食後の散歩って、なんだ、それ。
すみません、と弁解しようとして、沖田さんの言葉がそれを遮った。


「…いいですぜ」

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みるくれーぷあいす(プロフ) - 三毛猫さん» ありがとうございます!本当に嬉しい限りです。なるべく更新頑張るので、これからもこの作品をよろしくお願いします! (2019年12月8日 20時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
三毛猫(プロフ) - もう最高すぎて最初から一気読みしてしまいました!お気に入り登録させていたきました。更新無理せず頑張って下さい!!! (2019年12月8日 17時) (レス) id: 0ea5a6420c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/  
作成日時:2019年11月25日 18時

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