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土方side
·

「うわっ…え、トシ!?」

咄嗟に彼の乗っている自転車の後ろ部分をつかんだせいか、自転車のバランスが崩れそうになる。近藤さんはブレーキを踏み、後ろを振り返った。

「何やってるんだ、危ないよ」

返事をしようとしたが、走って息切れを起こしているため、出来ない。
近藤さんは眉をひそめて、前に向き直った──その途端。

前方の工事現場。白いフェンスで囲まれた、建設中のビルから、黒く細い何かが降ってきた。
ガアン!と音を立て、地面に転がる。

「鉄骨だ…」

俺はようやく言葉を発することが出来た。
自転車から手を離し、息をつく。
もし今自転車を止めなかったら、数秒後彼が通っていたであろう場所だ。

…また近藤さんを、助けられたらしい。


***

真夜中、十二時。
ベッドの上で寝返りを打つ。二度も不思議な体験をした興奮からか、全然寝付けない。
公園を使って、昨日に遡った。そして、近藤さんを助けた。
…全力疾走しすぎて、若干足が痛い。
寝られるまで音楽でも聞くかと、スマートフォンに手を伸ばした、瞬間。

「…嘘だろ」

着信音、暗闇の中光るスマホ。【沖田ミツバ】。
背筋に氷を当てられたような気分になる。

《大変っ…!近藤さんが!》

ああ、と声を漏らしそうになった。

《近藤さんが、亡くなったって…!テレビで、やってるの!》

俺は部屋の壁に立てかけてあるテレビのスイッチを入れた。
深夜のニュース番組。女性アナウンサーが、生真面目な顔で話している。

《繰り返します。今日二十時頃、△△県○○市の酒屋に強盗が押し入り、酒屋の長男と次女が刺し殺された状態で発見されました》

犯人は行方不明、警察は捜査中。
現場の写真が映し出される。被害にあった酒屋として紹介されていたのは、間違いなく、近藤さんの家だった。そして近藤さんは、酒屋の長男。

俺は煌々と光るテレビの画面を、呆然と眺めていた。


***

深呼吸をして、ボールを拾う。
三度訪れた公園。転がってきた、近藤さんが使っていたボール。

「トシ、何やってるんだ?こっちこっち」

「…近藤さん」

顔を上げれば、ボールを求める近藤さん。
俺は唇を噛み締める。
三度目の正直だ。絶対助ける。


前回同様、キャッチボールをした後、近藤さんの家まで同行し、配達に出かけた彼の自転車を止め、石段での転倒と鉄骨での死を防ぐ。

「トシが止めてくれなかったら死んでたよ、助かった」

今度こそじゃあな、と近藤さんは工事現場から遠ざかっていく。

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みるくれーぷあいす(プロフ) - ちぃなさん» ありがとうございます!これからも楽しんでいただけると嬉しいです。 (2019年10月30日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
ちぃな - ホラー好きなので嬉しいです!更新楽しみにしてます。 (2019年10月29日 14時) (レス) id: 43ae00df60 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 綾葉メグさん» ありがとうございます!マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします。 (2019年10月27日 17時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
綾葉メグ(プロフ) - 面白いです!更新楽しみにしてます! (2019年10月27日 15時) (レス) id: fe3feae032 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/  
作成日時:2019年10月15日 1時

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