カ ク シ 3 ページ43
土方side
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かくれんぼの影に見つかって動けない。
そのうちにもうとっくに日は暮れている。
俺は日の元に出ることはできない。
***
『…あ、ラッキー』
ぱしゃり、とシャッター音が響く。
総悟の明るい髪色と着物姿。そして鳥居。
気づいた総悟が振り返って無表情でピースサイン。朱い朱い背景に相まって、なかなか様になっている。
「追いかけなくていいのか」
『え?』
再びこちらに背を向けてゆっくりと歩き出す総悟。Aは、そりゃあ、まあ、うーん、と唸っている。
「とっとと行ってこいヨ」
「早くしないと、総悟行っちまうぞ」
他の奴らの声援も受け、Aは頷く。
沖田くん、と声をかけながら早足で追いかけて行った。
本当に俺は馬鹿なヤツだ。
「おもかるいしのところで合流だからな」
Aの背中に向かって少し大きな声で言えば、彼女は少しふりかえって親指をたてた。
その笑顔は見事なもので。
胸が苦しくなって、顔が熱くなって。
あーあ、なんでこいつのこと好きになっちまったかな。
「ほらほら、俺達もカップルの誕生を手伝ってやろうじゃないか。お妙さんも!」
「それを口実に近づくなゴリラぁぁ!」
清水寺まで持つだろうか。
同じ班の愉快な奴らと笑いながら、今日中でまた言葉を繰り返す。
かくれんぼ。
馬鹿らしい、と言葉を奥に追いやった。
***
『どうしよどうしよ、やばいやばいやばい』
見事な紅葉を誇る清水の舞台。
ついにこの時間になってしまった。
Aは鈴を手に、頬を紅潮させている。
「ちょっと落ち着けよお前、深呼吸」
『う、うん』
吸って、吐いて、吸って、吐いて。
ラジオ体操のように深呼吸をするA。
総悟は一番前で景色を見ている。
きっと総悟ももうすぐAに告白するはずだ。俺の後ろでは近藤さんらがニヤニヤしてカメラを構えているところだろう。
「なあ、A」
これから彼女は総悟のところへ行く。
ここが区切りだ。
俺の目は彼女をずっと捉えている。捉えているのに、するりと逃げていくかのように認識できないのだ。
現実を。真実を。
『なに?』
唇の両端をつり上げる。
なるべく笑顔を作る。
せめて総悟に塗りつぶされる前の彼女の記憶を、俺だけのものに。
「頑張れよ。ほら、行け」
ばん、と彼女の背中を押す。
一瞬驚いた顔をしたあと、にっこりと笑う。
『ありがとう!いってくるね!』
彼女は人混みの中を進んで行った。
姫をひとりで待っている、王子様のもとへ。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 鈴神さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます!これからも鈴神さんにそう思っていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします。 (2019年8月24日 13時) (レス) id: 0de76de774 (このIDを非表示/違反報告)
鈴神(プロフ) - こんにちは!突然ごめんなさい(汗 作品読ませて頂いたんですが、一人一人の気持ちがとても丁寧に書かれていて一つ一つの話にすごく惹かれました!!ほんとに素敵なお話ばかりなのでこれからも応援してます!頑張ってください!! (2019年8月24日 1時) (レス) id: de3968cf62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月13日 1時