ヒ ミ ツ 2 ページ37
沖田side
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まだ子猫といえるサイズの猫は、すぐに俺の腕の中に飛び込んで身をよじってきた。野良猫だろう。
『猫ちゃん…』
視線を感じて振り返ると、神崎がじっと猫を見つめていた。気になるのか、と尋ねようとしたその時。
神崎はまるでロボットのように俺と猫のほうに近づき出した。え、ダンス?
猫が神崎の方を見る。神崎も見返す。
「あ」
みゃん、と声をあげて猫は腕からするりと逃げ、どこかへ軽やかに走り去っていく。
『ま、また逃げられた』
…ん?
「猫、好きなのかィ?」
試しに聞いてみる。
『ええ、すっごく好きなんどす!うちは動物飼ってなくて、でもテレビとかで見ててずっと猫ちゃんがほしくて。たまに野良猫ちゃんなんかに近づいて見るんどす。でもいつも逃げられてしもうて。沖田はん、猫ちゃんに好かれてはりますね!どうしたら…』
はっと神崎が口をつぐむ。
さっきの『また逃げられた』で感じたイントネーションの違和感。
『あああ、ついつい…』
焦ったように頭を振る神崎。
寡黙だった神崎の長い言葉に方言。さっきからくるくる変わる表情。
「今まであんま喋んなかったの…」
神崎はがっくりと項垂れた。今の数十秒で神崎のイメージが180度変わった。こいつ、もしかして、
『うち、すごいお喋りで。前の学校の友達に、あんたは黙ってたほうがいいって言われてたんどす』
まあ、いきなり京言葉でマシンガントークは結構衝撃だ。
『それで、転校先ではなるべくおしとやかに、あまり喋らんとこうて決めて。標準語で自己紹介して、後は静かにしとったつもりだったんどすけど…』
顔を真っ赤にしながら早口になる神崎。どうやら猫の登場で、素が出てしまったらしい。
『あ、あの、沖田はん』
一人で慌てていた神崎が、俺のことを見上げてくる。
『このこと、皆には秘密にしてくれはりませんか?』
いや、似非中国語やカタカナ語の奴もいるし、俺も口調あれだし、気にすることはないんじゃないか。そういいかけて、神崎のあまりの必死さに口を閉じた。うまく弱味を握れた、というサド精神を刺激されて。
「いいですぜ」
だから、こんなはずじゃなかった。
『…おおきに!』
それまで遠い瞬きのようだった彼女の微笑みが、ひまわりみたいな笑顔になって。
意思とは無関係に、心臓が煩くなって。
「…おう」
__多分俺はこの時に、彼女に惚れてしまったんだと、思う。
※神崎さんの方言はかなりテキトーです!多分大阪弁とかも混じってます。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 鈴神さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます!これからも鈴神さんにそう思っていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします。 (2019年8月24日 13時) (レス) id: 0de76de774 (このIDを非表示/違反報告)
鈴神(プロフ) - こんにちは!突然ごめんなさい(汗 作品読ませて頂いたんですが、一人一人の気持ちがとても丁寧に書かれていて一つ一つの話にすごく惹かれました!!ほんとに素敵なお話ばかりなのでこれからも応援してます!頑張ってください!! (2019年8月24日 1時) (レス) id: de3968cf62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月13日 1時