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ベ ー ス 4 ページ4

Aside
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文化祭が目前に迫ったその頃は、放課後のほとんどを部活に費やしていた。
外は雨で、部室のエアコンはガンガンで、キーボードを全力で弾いて体を揺すって、ただただ笑っていたっけ。
そうだ。沖田が休憩に買ってきたじゃがりこはしょっぱくて、神楽の買ってきた紙パックのマミーは甘ったるかった。
演奏してた時の自分は、最強だ、とまで思ってた。誰がなんと言おうと、空間があんなに揺れていて、世界は輝いてて、今なら全部思い通りになるって、ここが地球のど真ん中だって、そんな都合のいい妄想までしてた。
神楽は気持ちよさそうに歌ってギターの弦をはじいて、土方は少し笑って足でリズムを刻まながらベースを奏でて、沖田は珍しく優しい表情をしながらスティックを振り下ろしてたんだ。

『…うん』

「その時の風景っつうの?それが濃すぎて。文化祭終わってからも、感覚が抜けなくて。気づいたら夏休みも終わって、空気が一変してて」

そうだよ。夏休み前のことなんてどこかに置き忘れた、とでも言いたげに、みんな、変わってしまっていた。

「ついてけなかったんだよな、俺も」

『…うん』

「自分が悪いって、分かってんだけどさ」

『…うん』

「意味わかんないくらいに腹立って。参考書開いても全然集中出来なくてよ、」

九月の初めを思い出す。周りの変化に焦って家で机に向かっても、何やればいいかも分からずに時間を浪費するだけだった。

「それが駄目だって分かってんだけどなぁ。焦るだけで、置いてかれてる気がして」

土方がこんなに喋っているのは、なかなかなかった。こんなに、自分の感情を話しているのは。

『…うん、すごく、分かる』

どうすれば、いいんだろうか。遅すぎた私達には、術がないんだろうか。
目の前が霞む。みるみる溢れる。水滴が頬を伝う。

ぽん。

頭に何かが置かれた感触に、顔を上げた。
それが土方の手だと気づくのに、時間はかからなかった。

「でもよ。お前も同じだってわかって、ちょっと安心した」

ずっと前を向いていた彼の目は私に向けられていた。私と彼の視線が絡む。

「仲間が、いたなって。皆前に行きすぎんだよなぁ、ほんと」

だから、俺達は俺たちのペースでいいんじゃねぇかって思う。
土方はそう言って、手をどかした。

『…土方』

私たちのペース。

「…あん?」

自分を認められたみたいで、全身から力が抜けていくきがした。

『…ありがとう』

「…おう」

泣くなよ。彼はそう笑った。

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みるくれーぷあいす(プロフ) - 鈴神さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます!これからも鈴神さんにそう思っていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします。 (2019年8月24日 13時) (レス) id: 0de76de774 (このIDを非表示/違反報告)
鈴神(プロフ) - こんにちは!突然ごめんなさい(汗 作品読ませて頂いたんですが、一人一人の気持ちがとても丁寧に書かれていて一つ一つの話にすごく惹かれました!!ほんとに素敵なお話ばかりなのでこれからも応援してます!頑張ってください!! (2019年8月24日 1時) (レス) id: de3968cf62 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月13日 1時

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