オ ワ リ 4 ページ29
神威side
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「未練?なんでよ」
何杯目かのビールを煽る。先程から視界がゆらゆら揺れていて、そろそろやめとかなくてはと思いつつ手は止まらない。
「それくらいしか思いつかないだろィ、高校時代最後の彼女と付き合う前はいろんな奴とっかえひっかえしてたんだからな、お前」
そういう沖田の頬は微かに上気していた。こいつも酔ってきた。
Aと付き合う前は告白されたら誰でも付き合っていたが、Aと別れたあとは誰とも付き合わっていない。なんでかは俺も分からない。
「別に興味失っただけだって」
「元カノ以外の女に?」
くすくすとそこ意地の悪い笑みを見せてくる沖田の顔面に何かぶちまけてやろうかと一瞬本気で考えた。
そういえばこいつもAの元同級生だ。俺と昔付き合っていたことを知っているのだろうか。
「そーいうお前こそどうなの、彼女は?」
ぐっとこらえて相手に話を振る。さァね、とつれない返事をする沖田。人に散々言ったきた癖になんだお前は。
「未練があるならとっとと言った方がいいですぜ?気楽に恋愛してられんのも今のうちだしねィ」
「なに偉そうに言ってんのクソ野郎」
さりげなく話を戻してきやがった。俺はビールのおかわりを注文して文句を言った。
「だってさァ、外に出れば砂漠だろィ」
「さばく?」
ふと沖田は口元のニタニタ笑いを消して、おつまみの秋皿に目を落とす。
「そ。純愛なんてしてらんないくらいカラカラに酷いところ、俺らはこれからそこで生きる」
カラカラに酷いところ、そこが大人の生きる社会だと言いたいのだろうか。
「今のうちだけでィ?ほぼ大人なのにぬくぬく学生やってられんの」
大人から大人としての振る舞いを求められる訳では無い期間。
「モラトリアムってこと?」
「それそれ」
沖田はほんの少し、塩ひとつまみ分くらいだけAに似ている。難しいことを楽しそうに話すところが。
「せっかくあるモラトリアムの贅沢、残りの分堪能してもいいと思うけどなァ」
「なんでさっきからそんな偉そうなの、同い年なんだけど」
テメーの精神年齢五歳だろィ?なんて言ってきたから今度こそ頭に正義のチョップを落とす。
沖田はいてーとか呻いたあと、一気に自分の酒を煽って立ち上がる。
「せいぜい頑張れ、恋する神威くん?」
どうやら俺の感情などお見通しだったようだ。ひらひら、と手を振って店を出ていく沖田。
「…アイツ金払ってなくね」
俺が一大事に気づくのはそれから五分後のこと。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 鈴神さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます!これからも鈴神さんにそう思っていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします。 (2019年8月24日 13時) (レス) id: 0de76de774 (このIDを非表示/違反報告)
鈴神(プロフ) - こんにちは!突然ごめんなさい(汗 作品読ませて頂いたんですが、一人一人の気持ちがとても丁寧に書かれていて一つ一つの話にすごく惹かれました!!ほんとに素敵なお話ばかりなのでこれからも応援してます!頑張ってください!! (2019年8月24日 1時) (レス) id: de3968cf62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月13日 1時