オ ワ リ 《神威》 ページ26
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オ ワ リ
神威
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神威side
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「ねぇねぇ阿伏兎、青春も終わっちゃうよ悲しいねー」
「いきなりどういう風の吹き回しだよ、熱でもあんのか?」
酷いなあ阿伏兎は、と言うと見た目おっさん中身もおっさんの阿伏兎は、当然の対応だろ、と肩を竦めた。
大学四年に差し掛かった俺達の、その時期の終わりは目前だ。
『知ってる、神威?』
今更、君に本気で恋をしたなんて言ったら、君は笑うだろうか。
***
「知ってるって、何を」
『モラトリアムとアドレセンスの違い』
なにそれ、と投げやりな返事をすれば、気になる、気になる?と小突いてきた。
「じゃあ気にならない」
『ええ、喋りたいのにー』
自慢したいだけじゃんそれ、と言うと、バレた?と笑うA。
__かつて妹が数人の友達を家に連れてきた時、Aもその中にいた。だんだんと話す回数も増え、妹抜きで会うこともあり、当然距離は縮まって、彼女の方から告白された。俺はそれを受け入れて付き合い始め、もうすぐ半年だ。
「はいはい、教えていいよ」
『なんか投げやりだなあ。まあいいや』
自分よりずっと博識で明るい彼女の話を聞いているのは楽しく、今日みたいな学校からの帰り道も会話がつきなかった。何となく俺は彼女と居るのが当たり前のように感じていて、このままずっと隣で並んで歩いて帰るんだろうな、なんてことをぼんやり思っていた。
思っていただけだ。口には出していなかった。その重みを俺はちゃんとわかってなかった。
『あのね。アドレセンスっていうのは、外国語でそのまま《青春》。モラトリアムっていうのは、社会的に大人であることを猶予される期間のことらしいよ』
大人であることを猶予?
なにそれ?
「やっぱ意味わかんない」
『だからさ、例えば18過ぎれば一応大人じゃない?でも学生だったら、大人から【大人】としての振る舞いを求められる訳では無いでしょ。モラトリアムって、そういう時期のことなんだって』
彼女の説明に納得したようなしないような。ふうん、と頷いた。
「じゃあ、俺達はどっちなの?」
面倒くさがってる割りには話聞いてくれるよね、とAは嬉しそうに笑う。
『私たち二人とも十八歳だから、アドレセンス真っ只中、モラトリアムの入りかけじゃない?』
「はいりかけ…」
俺は、今の学生時代がずっと続く訳では無いのか、とこの時改めて自覚した。
「Aってほんとよくわかんないこと知ってるよね」
『だって楽しいもん、知るの』
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 鈴神さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます!これからも鈴神さんにそう思っていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします。 (2019年8月24日 13時) (レス) id: 0de76de774 (このIDを非表示/違反報告)
鈴神(プロフ) - こんにちは!突然ごめんなさい(汗 作品読ませて頂いたんですが、一人一人の気持ちがとても丁寧に書かれていて一つ一つの話にすごく惹かれました!!ほんとに素敵なお話ばかりなのでこれからも応援してます!頑張ってください!! (2019年8月24日 1時) (レス) id: de3968cf62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月13日 1時