｢こんにちは、もう一人の私｣

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｢サナ、夏休み孝太たちとプール行こ！｣
｢いーよ！ 他に誰が来るの？｣
六時間目が終わるなりこちらへと駆けてきたアミに返事をする。
｢さっきーと大樹とうちらだよ｣
さっきーというのはこのクラスの佐々木のあだ名。二人は私たちと同じ二組で、橋本くんと同じサッカー部だ。

そしてさっきーは……
｢さっきー誘ってあげたんだよ、感謝して？｣
｢ありがとっ｣
私の好きな人だ。

｢なーに盛り上がってんの｣
｢あ、マユ！ 夏休みうちらと孝太とさっきーと大樹でプール行こ！｣
｢いいねー｣
｢マユも好きな人つくりなよー｣
｢えー男子みんなガキだしっ｣
｢うわっマユに好きな人できたら思いっきりいじってやるからなー！｣
二人のやりとりをぼうっと聞きながら、考えた。

かっこよくてスポーツが出来る男子は、可愛くて明るい女子しか見てない。

地味な子に遊ぼうと言われても、迷惑なだけだ。上のランクの男子は、上のランクの女子と遊ぶ。友達だってそうだ。

──いつからそうなったのだろう。

いつから？
いつから、
いつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつからいつか
｢サナ？｣

はっとした。

｢ううん……なんでもない｣

プールって何処のー？ なんて訊いてみたりして、何もないと二人に思わせる。

ああ、なんで今日はこんなことばかり考えてしまうのだろう。

＊＊＊＊

｢ファイトっ｣
ダムダムと体育館にボールをつく音が響く。
｢シュートっ｣
シュートしたボールはゴールのリングの上をコロコロと転がり……
だあん、と音がした。
……駄目だ。
｢はぁ｣
｢どんまいっ、次つぎ！｣
先輩が励ましてくれる。
｢はい……｣
今日はずっとこんな感じ。いつもは余裕で入るのに……
｢集合ー！｣
突如響いた部長の声。
こんな練習途中に集合？

｢今日は今度の大会のメンバーを発表する｣
顧問の言葉で、集合した部員全員の鼓動を感じた気がした。
特に、三年生の。
私たちは二年生だから｢出れればラッキー｣みたいな軽い気持ちだけれど、三年生にとっては残り数少ない大会だ。そりゃあ出たいだろう。

部長、副部長、さっき私を励ましてくれた桃先輩、と次々と先輩が名前を呼ばれ返事をしていく。

｢佐藤｣
｢……｣
先輩から肩をつつかれてはっとした。
え、私？

｢はっはいっ｣
｢うちの学校で唯一の二年だ、頑張れよ｣
その言葉に胸が踊る。
｢はい！｣

……頑張らなくちゃ。
渡されたユニフォームの番号は、11。
補欠だけれど、私には充分すぎた。

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