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「おはよ……」
私はダイニングにいた家族に挨拶をする。
そこでは父がニュース番組を横目に、新聞を読んでいた。
キッチンからは卵の匂い……
スクランブルエッグだろうか。
そして父の向かいでは、弟のひかるがトーストを頬張っている。
「おはよう、七海」
私の挨拶に唯一返事をしたのは、母だ。
「見て見て、ブルーベリージャムよ! 昨日買ったの」
どうやら機嫌はもう直ったらしい。
ブルーベリージャムさまさまだ。
しかし私はジャムではなく、母の手元に目がいってしまった。
「お母さん、それよりスクランブルエッグ焦げるよ……」
「それよりって何よ」
ああ、また機嫌が悪くなった。
母は不機嫌なままスクランブルエッグを取り分ける。
うわあ、私のお皿に焦げた物を置きだしたじゃあないか。
正直「私が言わなかったら全部焦げてたんだよ!」と異議を唱えたいところでもあるが、これ以上母を敵に回すと昼のお弁当が悲惨なことになりそうで心配だ。
……我慢しろ、七海。
喉まで出かかった抗議の言葉を飲み込み、私は席に着いた。
テレビの画面に目をやる。
『昨日午後四時頃、中学二年生の鈴木花子さんが死亡しました。原因は不明です』
アナウンサーのお姉さんが、淡々とニュースを読み上げる。人が亡くなったのに無愛想だなと思う。
「またこの季節か……」
それを見ながら、お父さんが呟いた。
「え? “また”?」
私は思わず訊き返す。
と、スクランブルエッグを運んで来たお母さんが悲しそうな顔で言った。
「梅雨の時期、毎年七海くらいの子が何人も命を落とすの……それがどれも原因不明でね。不気味よね」
「ついに七海も中二、気をつけないとな」
お父さんまでもが真剣な顔付きで言ってくるものだから、輝流が引きつった顔でこちらを見てくる。
「大丈夫、大丈夫! そんなのきっといつか原因判明するよ! それに私は、この通り元気だし!!」
私は、笑顔でこう言うしかなかった。
……本当は、怖かったのだ。
でも、此処で家族に気を使わせるのが怖かった。
自分の身にも本当に起きてしまいそうで……
私はこうして、また家族との距離を遠ざけてしまう。
心が、気持ちが、遠ざかっていくことを感じる。
何故私はこんなところで気を使ってしまうのだろう。
怖いなら怖いと言えば良いものを。
もし、人生がやり直せるのなら。
私は、自分の意見を言える人間になりたい。
でも。
私が変われないことなんて、もうとっくに知っている。
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かぐや(プロフ) - 水の犬。さん» 水の犬。様有難うございます!共感していただけて嬉しいです。お気づかいの言葉まで有難うございます…!面白いと思っていただける作品作りを心がけますので、今後ともどうかよろしくお願いします! (2019年2月19日 20時) (レス) id: f6494d153c (このIDを非表示/違反報告)
水の犬。(プロフ) - 初めまして!コメント失礼します。お話すごく面白かったです!主人公の気持ちで共感できる部分がたくさんあり、お話の世界に入り込んでしまいました(*∵*)更新、無理しない程度に頑張ってください! (2019年2月19日 18時) (レス) id: 1e3c02421b (このIDを非表示/違反報告)
かぐや(プロフ) - ありしあさん» お褒めの言葉有難うございます…!そんな風に言っていただけて本当に嬉しいです…!よい文章、物語を作り上げられるようこれからも頑張ります、どうかよろしくお願いします! (2018年3月24日 12時) (レス) id: f6494d153c (このIDを非表示/違反報告)
ありしあ(プロフ) - すごい…文章がよくまとまっていて、とても読みやすいですね!謎めいた事件から始まるストーリーも、先の展開が気になってしょうがなくなります! 次の更新も楽しみにしてますね! (2018年3月23日 21時) (レス) id: 8ee049553d (このIDを非表示/違反報告)
かぐや(プロフ) - すわさん。さん» そうなんですね、教えてくださり有難うございます…!そう言っていただけてとても嬉しいです! (2018年3月11日 19時) (レス) id: f6494d153c (このIDを非表示/違反報告)
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