いただきます! ページ7
三郎side
「いや大丈夫です。私家でご飯食べるので」
そう言ってAはニコリと微笑んだ。
「嘘だ!」
僕は咄嗟に大声を出した。いち兄は少し驚いた顔をした。気にせず、頭で考えるより先に言葉が零れる。
「お前、どうせ夕飯なんか食べないつもりだろ。さっきの唐揚げが夕飯なんだろ」
「……まあ、そうだね、うん」
Aは気まずそうに下を向いた。
いち兄は僕の肩に手を乗せる。優しい声でAに言う。
「今日、うちカレーなんだ。カレー、嫌いか?」
「……好きです」
「食っていけよ。帰りは送るからさ」
「あ、ありがとうございます……」
Aはおずおずとニカッと笑ういち兄に導かれて、家に入った。
いち兄が二郎に話をしている間に、僕にこっそり話しかけてくる。
「あのさ、本当にいいの?ご飯頂いちゃって」
「別に僕は構わないけど。それにさっきから腹の音うるさいし」
「え?!バレてた?」
「いや冗談のつもりで言ったんだけど……本当にお腹鳴ってたの?」
うんと照れくさそうに笑うA。
「えーっと、三郎の友達ー!飯、どんくらい食う?」
二郎に呼ばれてAは台所に向かった。
いち兄は僕の頭を撫でて、「ほら三郎も」と言う。
僕は、ご飯を装い終わりその皿に二郎にカレーを入れられているAの横でご飯を装う。
今日はなんかお腹すいたからいっぱい食べよう……。山盛りにして二郎に渡すと今日はやけに食うのなと言われた。
うるさいと返し、僕は席に着く。どこに座るか戸惑っているAを僕の横に座らせる。
二郎も山盛りカレーを持ってきて席に着くと、いち兄が言う。
「よし、全員揃ったな。じゃあいただきます!」
「いただきます!」
二郎と僕が言ったあと、小さくいただきますという声がした。
Aはやけに輝いた瞳をしていた。
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りんご - この作品は一言では表せないそんな素敵な作品に感じました。三郎と主人公の心情の変わり方が自然だなって思いました。是非とも作品の続きを見たいです! (4月1日 10時) (レス) @page44 id: 169b1ab724 (このIDを非表示/違反報告)
海老天ぷら - マカロニさん» コメントありがとうこざいます。返信大変遅れて申し訳ございません!『人間失格』は非常に私に影響を与えた本で、とっても大好きです!ただ、この作品は私の抱えている気持ちを綴っているものになりますので、温かく見守って頂けたらと思います! (2022年6月4日 23時) (レス) @page35 id: 8ac8a7e5a1 (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ(プロフ) - コメント失礼します。作者様もしかして、太宰治の「人間失格」好きですか……?「食事が何かの儀式のよう」という表現が出てきたので気になりました。違っていたらすみません! (2020年8月11日 22時) (レス) id: 30ec427a94 (このIDを非表示/違反報告)
海老天ぷら - らあなさん» コメントありがとうございます!夢主ちゃんの気持ち・環境等は結構悩みながら書いてるのでそう言って頂けて嬉しいです!山田兄弟と夢主ちゃんの絡み好きなのでもっと書きますね!(え)更新頑張ります!! (2020年4月26日 19時) (レス) id: db1ea870ef (このIDを非表示/違反報告)
海老天ぷら - ぱあたんさん» コメントありがとうございます!嬉しいです、ありがとうございます!嬉しすぎて私が泣いちゃいます…(え)更新がんばります…! (2020年4月26日 19時) (レス) id: db1ea870ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海老天ぷら | 作成日時:2020年2月10日 15時