君が泣くには ページ12
三郎side
二郎は僕の顔を見てさらに笑う。
腹立つ僕の顔は図星を指すものだからだ。
「悩んでるダチにしてやることなんてなんもねえよ」
「はあ？……なんもないって……」
「してやる、っていうのが間違ってる。それはてめえのエゴだ。お前がしたいと思うことをすればいい。……例えば、お前が悩んでるときに人に何をしてほしいんだ？」
「何って……。わからない。僕は、何を……」
僕は、悩んだことなんか……。ちっぽけなプライドが揺らいだ気がした。
僕の気持ちを掬い取るように二郎は言う。
「じゃ兄ちゃんだったら、どうすると思う？」
「いち兄は絶対、その人のために尽力する筈だ」
「まあお前も今はそうしてみたらいいんじゃね？な？」
「……二郎もたまにはいいこと言うじゃん」
たまにはって何だ、たまにはって！と怒る二郎を無視して、僕は家を飛び出した。
行く先は池袋西口公園。いるかどうかはわからない。でもそこしか知らない。家に帰りたがらない子供がどこに行くかなんてわからない。
二郎やいち兄が夜ふらついているときどこに行くかなんて知らない。
僕はそんなことしたことがないからだ。しようと思ったこともない。僕はただ、心配かけたくないから。
下を向いて歩き進む。早歩きでとにかく進む。
いち兄や二郎は自分たちのことを置いておいて、僕に危険なことをさせないようにする。
それが二人の優しさだってわかってる。
いち兄は二郎には仕事の相談をする。二郎はいち兄には涙を見せる。
僕が頼りなくて言わないわけではない。わかってる。
でも、わかってるけど。
大きく息を吸い込み顔を上げると風が吹いた。
前髪が割れて、目の中に風が入る。
彼女の髪が靡いた。
ああ、悲しむな。君が泣くにはあまりにも汚い空だ。
なあ、笑ってくれよ。そんな顔で大粒の水を零すな。
「山田く……」
僕は彼女の顔を掴むように包み込んだ。
熱いよ、この水。何で零すの。勿体ないよ。君に相応しくない。
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りんご - この作品は一言では表せないそんな素敵な作品に感じました。三郎と主人公の心情の変わり方が自然だなって思いました。是非とも作品の続きを見たいです！ (4月1日 10時) (
レス) @page44 id: 169b1ab724 (このIDを非表示/違反報告)
海老天ぷら - マカロニさん» コメントありがとうこざいます。返信大変遅れて申し訳ございません！『人間失格』は非常に私に影響を与えた本で、とっても大好きです！ただ、この作品は私の抱えている気持ちを綴っているものになりますので、温かく見守って頂けたらと思います！ (2022年6月4日 23時) (レス) @page35 id: 8ac8a7e5a1 (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ(プロフ) - コメント失礼します｡作者様もしかして､太宰治の「人間失格」好きですか……？「食事が何かの儀式のよう」という表現が出てきたので気になりました｡違っていたらすみません！ (2020年8月11日 22時) (レス) id: 30ec427a94 (このIDを非表示/違反報告)
海老天ぷら - らあなさん» コメントありがとうございます！夢主ちゃんの気持ち・環境等は結構悩みながら書いてるのでそう言って頂けて嬉しいです！山田兄弟と夢主ちゃんの絡み好きなのでもっと書きますね！（え）更新頑張ります！！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: db1ea870ef (このIDを非表示/違反報告)
海老天ぷら - ぱあたんさん» コメントありがとうございます！嬉しいです、ありがとうございます！嬉しすぎて私が泣いちゃいます…（え）更新がんばります…！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: db1ea870ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海老天ぷら | 作成日時：2020年2月10日 15時
