イルミナント

F93 #6 ページ6

「元気になった？」



目を覚ませばそう、光が声をかけてきた。
きっと俺がいれば邪魔だろう。もともとここは彼の寝床だ。



「っ……」

「あっちょっと、動かないで！」



ベッドから抜け出そうと上体を起こせばぐらりと傾いた。
不快感が全身を駆ける。



「ごめんね。宏ちゃん呼んでくるね。」



ぺたぺた足音を鳴らしながら部屋を出ていく光。
少しさみしいな。


いや、そんなことない。俺は一人だ。一人で生きていけるんだ。



「嫌かもしれないけどごめんな。ちょっと体調だけ見せて？」



そう言って昨日のようにマグカップを差し出してきた職員。
受け取りたくない。




「無理に頼ろうとか思わなくていいから。でも水分摂らないと死んじゃうから、ね？」



なんなんだこいつは。
俺に関わりたいのか関わりたくないのかどっちなんだ。

俺は、関わってほしくないんだ。



「飲み終わったら出ていくから。それだけ飲んでくれないかな？」



どうすればいい？どうすれば一人の力で生きていける？



ぼーっとした頭じゃ答えなんか出なくって、マグカップの水を飲み干した。


F93 Fin.

F92 #1→←F93 #5

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す