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J93 #3 ページ31

「……よかったの?」

「ん?」

「連れてきてあげなくて。」

「まぁちょっと可哀想だけど、少しは我慢も覚えてもらわなきゃ。もうすぐ小学生だし。」



それに、


「慧くんが2人で行きたいって言ってくれたの嬉しかったからさ。」


そう言えば少し頬が赤くなる。
素直になってくれて嬉しい限り。


連れてきた場所はショッピングモール。
ここならなんでもあるし、何かしら欲しいものも見つかるでしょ。

彼をここに連れてきたのは、あまりにも所持品が少ないから。

一緒に外に買い物に出たこともなかったし、好みを知れてちょうどいいかもしれない。



「何屋さん行こうか?」

「わかん…ないです……」

「じゃあ下から順番に行く?」

「……うん。」



たまに混ざる敬語。
自分の意見を出さない控えめな性格。

うちにいる子たちと大体同じ特性。



「慧くんはどんな服が好きなのかな〜」


服屋に入ればキョロキョロと辺りを見渡す。
今着ている服も、家にある服も、ほとんどが俺や雄也のお下がり。

さすがに下着は買ったけど、それも俺が適当に見繕ったもの。

そもそも慧くんの所持品はあのネコのぬいぐるみとランドセルと筆記用具だけ。
それ以外は何も持っていない。



「欲しいなって思ったのあったら言っていいんだよ?」

「あのっ…」

「どうした?」

「欲しいとか、わかんない…です……。」



俯いてそう言った。



「自分の好きなものとか、自分の欲しいものとか、わかんない……」

「そっか…」



この子は一体どれだけ抑圧された生活を送っていたんだ?
何もかも、与えられたもの、言われたもので過ごしてきたのか?



「じゃあねぇ、なんでもいいよ。好きなもの。一個今日見つけて帰ろう。食べ物でも生き物でも、色でも柄でも。」

「……。」



言葉こそ何も発さなかったけど、慧くんは困ったように頷いた。
不安なのかな、そんなもの見つかるのかって。



「見つかるって思ってれば見つかるよ、大丈夫。」

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青空と虹(プロフ) - わざわざ言っていただいたのにすみません……これからもよろしくお願いします! (2021年2月2日 2時) (レス) id: 4cc456b6d8 (このIDを非表示/違反報告)
ぷく顔信者(プロフ) - 青空と虹さん» いえいえ!了解しました、これからも応援しています! (2021年2月1日 21時) (レス) id: 802ab26e17 (このIDを非表示/違反報告)
青空と虹(プロフ) - ぷく顔信者さん» はじめまして!コメントありがとうございます。今のところ自分の作品はイニシャルを入れずに伝えたいな、と思っており、入れずに進める方針です。読みづらくなってしまい申し訳ないのですが、誰が話しているのか考察して欲しいな、という作者の我儘です。ごめんなさい! (2021年2月1日 20時) (レス) id: 4cc456b6d8 (このIDを非表示/違反報告)
ぷく顔信者(プロフ) - 初めまして!まだ数話しか更新されていませんが、楽しく読ませてもらっています(´˘`*) 差し出がましいのですが、鍵かっこの初めに誰が話しているかわかるようにイニシャルなど入れていただくことは可能でしょうか…? (2021年2月1日 19時) (レス) id: 802ab26e17 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:青空と虹 | 作成日時:2021年2月1日 0時

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