イルミナント

J41/F33 #3 ページ26

「けいくん、いまさびしくなぁい？」




寂しい…寂しいってどんな感じなんだろう。
どこかで寂しく感じているはずだけど、どれがそれなのかわからない。




「寂しくないよ。」




きっとこう答えておくのが無難だろう。相手は６歳児だ。



「そっか！」



納得したようで、また滑り台の階段をたんたんと音を鳴らして駆け上がる。
小さな靴は、階段と同じ真っ赤だった。




「さっきなんの話してたの？」



なんだか困っていたみたいだけども、って職員が話しかけてくる。
あぁ困ってた。めちゃくちゃ困ってた。
子供相手だとなんて答えればいいかわからない。




「パパとママのはなししてたの！」



その一言に職員の顔からサッと血の気が引く。
そりゃそうだよね。俺の家庭事情は知っていたとしてもそこまで詳しくないだろうし、それを掘り返そうなんてそれこそ地雷処理状態。



「ね、パパとママの話。」



だから助け舟。
６歳児ににこりと微笑む。

少し不思議そうな顔をしていたけれど、それからすぐに笑顔に戻った。



「けいくん、さびしくないって！！！」



その言葉が職員を救ったらしい。
俺の方を見て表情を緩めると、「そっか！よかったねぇ」って６歳児を抱き上げた。

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