J105 #2 ページ13
家に帰ってすぐのこと。
光と俺の部屋に入れば、自分の机の向かい側、小さなタンスの上にネコのぬいぐるみが今日も出迎えてくれる。
はずだった。
ガチャリと開けた部屋の中、突っ立っていたのはここで一番のチビ。
そのチビが、ネコの手をグッと握っていた。
チビに握られたネコは、プランプランと宙を泳いでいる。
「ふざけんな。」
自分でもびっくりするくらい低い声が出た。
「ふざけんなよっ…!!!!!」
そう叫べば「ふぇっ」と声を漏らして泣き始める。
その手はより強くネコの手を握った。
「離せよっ!俺のっ……!」
チビの手からネコを取り返す。
俺の、唯一の、宝物を。
お父さんとお母さんの思い出が詰まった宝物を。
「触るなっ……!!!」
チビの手を振り払った。
パシっと乾いた音がして、小さな手が舞った。
呆然としたチビはさっきより大きな声で泣き始めて、そこで扉が開いた音がした。
「うっ……うぅっ…ごうっちゃ……んっ………!」
チビはすぐに職員に縋って、これは俺のせいにされるなと察して謝った。
正直悪いだなんて思っていないけれど。
俺のものに勝手に触ったこいつのせいだろう。
伸びてきた手を避けるように部屋の外に追い出して、咄嗟に鍵を閉めた。
先ほど乱暴に取り返した腕の中のネコは少しだけ泣いている気がした。
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青空と虹(プロフ) - わざわざ言っていただいたのにすみません……これからもよろしくお願いします! (2021年2月2日 2時) (レス) id: 4cc456b6d8 (このIDを非表示/違反報告)
ぷく顔信者(プロフ) - 青空と虹さん» いえいえ!了解しました、これからも応援しています! (2021年2月1日 21時) (レス) id: 802ab26e17 (このIDを非表示/違反報告)
青空と虹(プロフ) - ぷく顔信者さん» はじめまして!コメントありがとうございます。今のところ自分の作品はイニシャルを入れずに伝えたいな、と思っており、入れずに進める方針です。読みづらくなってしまい申し訳ないのですが、誰が話しているのか考察して欲しいな、という作者の我儘です。ごめんなさい! (2021年2月1日 20時) (レス) id: 4cc456b6d8 (このIDを非表示/違反報告)
ぷく顔信者(プロフ) - 初めまして!まだ数話しか更新されていませんが、楽しく読ませてもらっています(´˘`*) 差し出がましいのですが、鍵かっこの初めに誰が話しているかわかるようにイニシャルなど入れていただくことは可能でしょうか…? (2021年2月1日 19時) (レス) id: 802ab26e17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:青空と虹 | 作成日時:2021年2月1日 0時