楽園のない世界【紫】 ページ41
「A！」
…毎日、真っ白な手紙が届く
彼は黙って破り捨てるけれどゴミ箱の中から私は見つけてしまう
…先週はチャイムが鳴ったから出たら真っ黒な瞳をした小さな子どもがじっとこちらを見ていて
家にいても時々、ぱしゃりとシャッターを切る音が聴こえる
この間は部屋の中を熊ん蜂が飛び交っていたから私はテーブルの上のものを投げて応戦した
…夢の中には彼らが繰り返し現れ
ああ、でももう全ては夢なのか現実なのか私にはわからない
「A！」
…昨日窓の外に桜が散っていたのは幻だったのだろうか？
音が、聴こえるーー…
ブラームスの7つの幻想曲
地響きのような
ああやだ信ちゃんこんな大きな音でかけたら近所に迷惑なのに…
「ーー…A！」
「…信ちゃん」
「そうや、わかるか！？」
「信ちゃん…」
「ん…」
「信ちゃん信ちゃん信ちゃん信ちゃん信ちゃんーー」
…薄靄の中の彼は慌てた様子で何処かから薬を持ってくる
…甘い、すてきな薬
「ーー…っ、」
それを口に含んで私に口付ける
彼の甘い舌が私の咥内を掻き回す
「あっ…、」
彼はそのまま私を抱く
カーペットの上
あ、ソラがこっちを見てる
四つん這いにされた私と眼が合ったソラは信ちゃんを取られて恨めしいのか
ふいと、踵を返して遠ざかっていく
「あっ…、信ちゃ…、」
「ん…」
「っ…、もっとしてーー…」
もっと、もっと乱暴でいいからもっと
内側を掻き回し世界との境界を曖昧にして
お願いーー…
「あ、好き…、っ」
好きなの
今私の肩を掴む指も声も皮膚も眼も髪も血も骨も全部
もっと
もっと貫いて欲しいーーー…
「っ…、信ちゃ、っ、好き…？」
「ん…」
「私のこと好き？」
喉が反るーー…
「好きや…」
「あっ…、もっと言ってーー…」
「好きや」
「お願い、もっとーー…」
「好きやーー…」
ーー…
“なあA、僕んこと好き？”
“好きだよ”
“ねえAちゃん、僕んこと好き？”
“好きだよ”
ーー…
…ねえどうして
人は確認してしまうのだろう
私たちは予め知って生まれてきたのかもしれない
この世には、
楽園なんて無いことをーー…
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たまご(プロフ) - okmrernさん» あ、なんか途中で送信しちゃったごめんなさい…！引き続きよろしくお願いします！ (2020年6月2日 17時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - okmrernさん» okmrernさま、お久しぶりですありがとうございます！ここまでされても私はこの村上信五とつきあいたい (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさま、お久しぶりですありがとうございます！ラスボスは一番そばにいるということでひとつ…！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ぐふ。さん» ぐふ。さま、初めてのコメントうれしいですー！！信五最強説です…！そしてビリヤード！素敵ですねそれ…ただ友達がいる設定にしてしまったなあの店員さん…… (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ゆき姉さん» ゆきえさん！コメントありがとうございます嬉しい！ほんとしんどい話でごめんなさいね…いつもありがとうございます！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2019年8月18日 23時
