師走の決別 ページ35
間違いなく言えるのは
私のこれまでの人生に、「サカシタヒカル」という人物が登場したことはなかった。
SNSを辿ると彼女がライターになる前に書いていたらしき個人ブログを見つける。
歯切れのいいリズムで書かれたかつての彼女の文章によると、
彼女は三重県出身で、大学から東京へ出てきたようだけれど、
その出身校も私の知る誰とも共通していることはなかった。
強いていうなら大学では福祉の勉強をしていたようで、それがヤスくんと被ってはいたけれど、
在学中に彼から彼女の名前が出たという記憶はない。
「A？ 今日もランチ行かんの？」
「あ…ごめん、ちょっと早く帰りたいから朝コンビニで買ってきちゃった」
「あ、そーなんだ、オッケー」
…あれから、三日間
今日もさりげなく誘いを断り、隣に座っていた彼女はふらりと一人街へと消えていく。
これまでの人生に、彼女と私が交わった形跡はない。
けれどーー…
あの…隆平さんのかつての恋人も
タカギさんも、私の預かり知らぬところで動いていたことを後から知ったーー…
…彼女の、背景に
また誰かがいるのかもしれないと
彼女は一体誰と繋がっているのだろうと疑心暗鬼になった私は
とりあえず今日を乗り切ったらもう、年末年始のお休みだから
なんとか隙を見せずにいようと…
「A！」
「…どうしたの、もう上がれるの？」
「や、ちょっと駅前の郵便局行くから、ついでに」
…仕事納め、早々に切り上げ挨拶をした私が会社を出ると、彼女がついてきて私は密かに驚く。
右手には今時珍しく手書きの年賀状の束と、どこかに発送するのだろうか、小さな紙袋を下げていた。
「やー、ようやく明日から休みだねえ」
「…そうだね」
「あ、そういえばさ、どうだった？ イブ。美味しかったでしょあそこの焼き鳥」
「ーー…」
「そーいや年末年始はどっか行くの？」
「……」
「…A？」
…私は思わず立ち止まる
どういうつもりでこの人はこんな笑顔で
こんなことを聞くのだろう
私があなたに何をしたというのだろう
信頼しきって何もかもを話していた自分がたまらなく愚かに思えるーー…
「…ごめん、もう放っといてくれないかな」
「…A？」
振り返る彼女を抜き去って私は駆け出す
師走の街を無軌道に行き交う人たちの間を縫い必死に逃げるように
今年がもう、
終わろうとしていたーー…
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たまご(プロフ) - okmrernさん» あ、なんか途中で送信しちゃったごめんなさい…！引き続きよろしくお願いします！ (2020年6月2日 17時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - okmrernさん» okmrernさま、お久しぶりですありがとうございます！ここまでされても私はこの村上信五とつきあいたい (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさま、お久しぶりですありがとうございます！ラスボスは一番そばにいるということでひとつ…！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ぐふ。さん» ぐふ。さま、初めてのコメントうれしいですー！！信五最強説です…！そしてビリヤード！素敵ですねそれ…ただ友達がいる設定にしてしまったなあの店員さん…… (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ゆき姉さん» ゆきえさん！コメントありがとうございます嬉しい！ほんとしんどい話でごめんなさいね…いつもありがとうございます！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2019年8月18日 23時
