長い物語【紫】 ページ16
「落ち着け! ほんでええから、最初っから話してみ!」
ーー…
…いつの間にか湿った砂利に膝をついて崩れていた私の前にしゃがみ込んで目線を合わせ
歪んでいた視界が
彼のまっすぐな顔を、その瞳を捉えたーー…
「…最初って、どこから…」
「知らんがなそんなもん、生まれた瞬間から聞こか? どこの病院や」
…大真面目にそんなことを言って
泣いていた私の顔がまた歪む
…なんて変な人に捕まってしまったのだろうと
「…わからんけど、今のお前はこんがらがった紐であやとりしとるようなもんやろ」
「ーー…」
「…立てるか? あっちのベンチ座ろうや」
…なんて優しく私をほぐす言葉を持つ人に捕まってしまったのだろうとーー…
「…ええから、思いつくとこから話してみ、あ、ちょお待っとって」
…私をベンチに座らせた彼はまたしなやかな脚で走って行き
「…ほれ」
自販機で買ってきた温かいお茶を差し出したーー…
「ーー…」
「なんや、嫌いかお茶」
「…いや、ベストな選択だなと思って」
「あ? 嫌味言うとる?」
「…前 付き合っていた人は」
「…おん」
「…こういう時どれを選んでいいかわからなくて…缶コーヒーとポタージュと冷たいお茶とレモンスカッシュを買ってくる人だったんです」
そして私の長い長い物語は幕を開けるーー…
“昔々あるところに”って、
違う
これは、私の物語
“…最初は、大学生の頃で”
“…私には恋人がいました、サークルが一緒の”
“彼は私をすごく大事にしてくれて…その分、束縛も強くて”
“…でもある時、私、1限の授業の後の空き時間にそのサークルの部室に行ったら”
“そこで出会った8年生の先輩と、毎週話すようになったんです”
…それは誰にも話したことのない、詳細な物語だった
“その人は不思議な人で、自分の存在した証を残そうとしなくて”
“…だから、誰にも言うなと言われて、私は恋人にも彼の存在を内緒にしていました”
“…会えるのは、授業があるほんの数ヶ月間だけのことだったから”
“…多分期間限定だっていう焦りとか、いろんなものが重なって”
“…クリスマスイブの日、大雨で授業が休講だったのに、彼に会いに行ったんです”
“…その日初めて、その部室で、彼と寝ました”
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たまご(プロフ) - okmrernさん» あ、なんか途中で送信しちゃったごめんなさい…!引き続きよろしくお願いします! (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - okmrernさん» okmrernさま、お久しぶりですありがとうございます!ここまでされても私はこの村上信五とつきあいたい (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさま、お久しぶりですありがとうございます!ラスボスは一番そばにいるということでひとつ…! (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ぐふ。さん» ぐふ。さま、初めてのコメントうれしいですー!!信五最強説です…!そしてビリヤード!素敵ですねそれ…ただ友達がいる設定にしてしまったなあの店員さん…… (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ゆき姉さん» ゆきえさん!コメントありがとうございます嬉しい!ほんとしんどい話でごめんなさいね…いつもありがとうございます! (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たまご | 作成日時:2019年8月18日 23時