医者と患者【紫】 ページ12
…彼は、お医者さんだから。
「よお、あんま夢中になっとるとまた倒れるで？」
「…水分補給してるんで大丈夫です」
「ははは、まあ顔色よさそやしええけどあんま根詰めすぎたらあかんで？」
…私の体調を心配する。
…彼は、お医者さんだから。
「…衣食住が満たされていない国の人たちのほうが、その欲求を満たすことに精一杯になるから、精神的には健康だったりするんですか？」
「どうやろなあ、そもそも精神保健対策が行われとらんからデータが取られへん国もあるし、新興国は新興国で経済格差のストレスで病みやすかったりもするしやな」
…私の愚にもつかない質問に答えてくれたりする。
…彼は、お医者さんだから。
「…誰かの役に立ちたいって思うこと自体、結局自分が必要とされる充足感を得るためでしかないんですかね」
「んー？ まあそういう側面もあるやろうけど、そうやって関わり合っていくんが社会やからなあ、悪いことやあらへんと思うで」
…私はつい、漠とした自分の心内を明かしてしまう。
「ーー…あ」
「…？」
「…ほんでも、“誰かのために生きる”んはあんまオススメせえへんわ。そうなった瞬間相手に見返りを求めてまうし、自分の意志で生きとる言う感覚がなくなってまうからな」
「ーー…」
「…人は自分の意志で選択して生きてくからこそ、その責任も引き受けられるもんやから」
…彼は、お医者さんだから。
私は、彼の言葉を聞いてしまう、彼に話をしてしまう。
毎日午後から夕方にかけて私は本を持って公園へ行く。
誰かの言葉や価値観を内側に取り込んで自分を相対化して、それはまるで自分と他人の境界線を初めて知った思春期の子どものように
たくさんの人を傷つけた自分という存在が一体今後どうやって生きていくべきなのか
…その答えをどこかに探すように。
「村上くん何してんだよ、えっろ！」
「アホかなんで俺がえろいねん」
「だって最近ずっとその女の人と一緒にいるじゃん、えっろ！」
「ははは！ 羨ましいんやろお前ら！」
私の隣、ベンチに座り広場の真ん中から叫ぶ子どもたちと大声でそんなことを話すーー…
…彼が、お医者さんだから。
…本を、読みたいから。
…私が公園に行くのは、
いつもつい彼と話をしてしまうのは、
ただ、それだけの理由ーー…
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たまご(プロフ) - okmrernさん» あ、なんか途中で送信しちゃったごめんなさい…！引き続きよろしくお願いします！ (2020年6月2日 17時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - okmrernさん» okmrernさま、お久しぶりですありがとうございます！ここまでされても私はこの村上信五とつきあいたい (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさま、お久しぶりですありがとうございます！ラスボスは一番そばにいるということでひとつ…！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ぐふ。さん» ぐふ。さま、初めてのコメントうれしいですー！！信五最強説です…！そしてビリヤード！素敵ですねそれ…ただ友達がいる設定にしてしまったなあの店員さん…… (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ゆき姉さん» ゆきえさん！コメントありがとうございます嬉しい！ほんとしんどい話でごめんなさいね…いつもありがとうございます！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2019年8月18日 23時
