二人の魔法使い【赤と青】 ページ13
「かなわんやろ」
「……」
「あいつは…アホのくせに、ほんまに本質つくのだけは うまいねんなあ」
私は、泣いていた。
しわくちゃになった顔をさらして、泣いていた。
……この二日間が、魔法だったとしたら。
その魔法をかけてくれたのは……
私がたくさん傷つけた、
ヤスくんだった。
いつだって驚くほどにまっすぐで、
自分の弱さも、他人のずるさも、逃げずに向き合う強さがあって、
誰かのために、一生懸命になれるひと。
……私は、あなたのように、なりたい。
あなたのおかげで。
言葉足らずに、身体だけを重ねて、
思いやるふりをして、自分が傷つかない準備ばかりして、
失うことを避けるために、大切なことから逃げ続けて、
なのに求める心をおさえられなかった、
私たちの愚かで愛しい、８年間。
ーーその日々が、今 宝物になって、胸の中にある。
彼が泣いている私の肩を抱きながら言う。
「…そう言われてもなあ、正直、どうしていいかわからんかったんやけど」
「……」
「…鍋食いにいった日、ずっとそのことばっか考えとったんやけど」
「……」
「お前が『雪見たいー』てアホなこと言うてくれて、助かったわ」
「……」
「…正直、マンション買うてくれー、言われてたらこの展開なかったで」
「……」
「…ツッコむとこやろ、ここ」
「…言ったら、買ってくれた？」
「…お前がそれで笑うんならな」
ヤスくんとは形の違う 不器用なやさしさに包まれて、
私は、泣き笑いで、変な顔になる。
魔法使いは、二人いた。
それから彼は突然、ちょっとした嫉妬心を露にする。
「…なあ」
「ん…？」
「…ヤスと、どこまでしたん？」
「え…？」
「…あいつ、なんもしてへんて言うとったけど…ほんまか？」
「…して、ない…よ？」
「うそ、ついたらあかんで」
「……」
「…挿れられた？」
「…されてなっ」
「ふーん…じゃあ……キスは？」
「……」
「…あいつ、殺さなあかんな」
彼が真面目に拗ねているから 私が困って黙り込むと、
彼は仕方ないなあという顔で笑い、
またキスをした。
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たまご(プロフ) - みかんさん» みかんさま、教えてくれてありがとうございます、探して数ページ読んでみましたがちょっと笑ってしまいました…。コメント欄閉じていらっしゃるので確信犯かな。。なんとも言えない気分です笑。 (2020年3月1日 20時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - くるみさん» くるみさん今更のお返事でごめんなさい、いつもありがとうございますー！また気が向いたらここも更新できたらいいな…（やるやる詐欺になりつつありますが）今後ともよろしくお願いします！ (2020年3月1日 20時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - このお話大好きで繰り返し読ませて頂いてます。。スノのほうで白夜というお話があるのですがとてもこのお話に激似です。。確認してみてください。 (2020年2月28日 13時) (レス) id: 9f4ab94ec1 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - またこの2人に会えて嬉しかったです！会えて、っておかしいか？笑 渋谷さんの不器用な優しさが沁みますね〜。またこんな感じで細々と続く2人をずっとずっと見守っていきたいです。寒い冬に暖かいエピソードありがとうございました！ (2020年1月21日 1時) (レス) id: 64389dcac8 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - あくあさん» あくあさま、雪が降るといえばあくあさん、という感じだったのでコメントうれしいです。そうですね、彼らは何気ない日常のワンシーンを覗き見するみたいな感じで描きたかったので、そう感じてくださったなら本当に嬉しいです。ありがとうございます！ (2020年1月20日 23時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2018年1月11日 0時
