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さよならのシーン【緑】12 ページ4

…それは、笑ってまうほどにありふれた、普通の恋やった。


“今からそっち行ってええ?”


“起きて待ってる”


深夜3時やろうと俺たちは寸暇を惜しむ



「ちょっとお、お前先に観たやろぉ」


「ごめんごめん、もう一回一緒に観るから、ごめんね!」


そん頃の俺たちは『ウォーキングデッド』に二人してハマっとって



「ちょっとこの後ほら、ローリがね」


「いやちょっと今観とるんやから言わんといてやもぉ」





「ん…、観るんじゃなかったの…?」


「んー? お前は観といてええで」


「っ、…だから私はもう観たんだってば…、っあ…、」



…何度も抱くほどに

彼女は不思議なほど俺の肌に馴染み 首筋が俺を誘う


俺ん腕の中に座って画面を観ていた彼女

部屋着で身を捩るんを羽交い締めにして白いうなじを唇で食む



「や…っ、」


「…言うてお前も待っとったやろ」


「っ…、ん? なに…」



「…手ぇ突っ込んだ瞬間濡れとるやん、おかしない?」


「やだ…っ、」


こんなん、誰にも見せられへんようなぐずぐずのやりとり




「あっ…、やっ、そこ…」


「ん…A、ここ好き?」



あーーーー

とにかく


俺は彼女に自分でも驚くほど夢中やった、
初めての女でもあらへんのに



何かを選ぶ時のちょっとしたセンスやったり

横から見た時のおでこのラインやったり


ちっちゃな “ええな” がシャワーみたいんなって俺に降り注いでいた



付き合うようになってみると意外なことに彼女はよく笑い、よく泣いた


彼女が泣くのはいつも不思議な瞬間やった



“悲しい時より、こういうほうがダメなんだよね私”



例えば、二人でベランダに微かに積もった雪をしゃがんで掻き集めて小さな雪の玉を作ってお互いにぶつけ合った時


“うっわ最悪やんー、口ん中入ったわもぉ〜”


笑いながら頭に飛び散った雪の欠片振り払っとったら



…彼女が泣きそうな顔で笑っていた

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Aki(プロフ) - 初めまして。たまごさんの作品には芯と真があって、心を抉られながらもその毒性ある棘を触ってしまいます。素敵な物語、されど味わったことのある表現できなかった過去の感情が溢れてきて、気持ちの整理が少々追いつきませんが、素敵な作品をありがとうございます。 (2019年10月24日 1時) (レス) id: 25a44a4956 (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - 『さよならのシーン』 うまく言えないけれど、切なさで胸がドキドキして泣きそうでした…素敵なお話ありがとうございました♪ (2019年10月23日 3時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - つい一気読みしてしまいました。切なくて胸がいっぱいになりました。たまごさんの作品はいつも心にスッっと響くものばかりで感動しています。次の作品も楽しみにしています。 (2019年10月23日 1時) (レス) id: cfcb601f80 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たまご | 作成日時:2019年10月22日 23時

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