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豆腐の行く末【赤】 ページ9

「…お前、何しとんねん…」



部屋着にサンダル姿の彼が、疲れ果てた顔で穴の中を覗き込む。

私はぐちゃぐちゃの顔のまま、涙でほとんど見えない中、その人の顔を見つめた。


「なんでこんなわかりづらいとこおるん… かくれんぼやないねんから…」

「……探してくれたの…」

「…鞄置いて帰った女、探さん奴がおるか」



“よっこらせ”、と、彼が穴の中に入ってくる。

子供3人が入ればいっぱいになってしまいそうな穴に、ぼろぼろな大人が、ふたり。



私の横になんとか腰をかけた彼が、そのまま両手を首の後ろに回し、ギュッと抱きしめてくる。


「…すまん。当たってもうた」

「……」

「ちょっとしんどいことあってな。お前には関係ないことやのに…」

「……」

「俺が、悪かった。すまん」

「……」


「しかし普通出てったとしてもコンビニとかファミレスとかに行くもんちゃうん? 店員に何名様ですか? 言われて店内一周して帰るのめっちゃ恥ずかったわ」


「……お豆腐は…?」


「おん。拾って食ったわ」

「……掃除、してもらわなかったの?」



「…しんどい日に呼べる女なんて、そうそうおらんよ」



そう言って耳元で少し恥ずかしそうに笑う声がしたから。



「…うん…ごめん…ごめんね……」

私はますます涙が止まらなくなって、彼の薄い身体を、必死で抱きしめた。




「…仕事、もう平気なんか」

「うん、大丈夫、ごめんね明日プレゼンで…」


「…明日早いん?」

「いつも通り、かな…」



「……なら、もうちょっとだけここにいよか」



その日は結局、夜が明けるまで、その小さな穴の中でくっついて、


延々とキスをして、過ごした。

同じ穴の中【赤】→←迷子の逃げ場所【赤】



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たまご(プロフ) - ななさん» なな様、うれしいコメントありがとうございます^ ^ すばるくんとの旅行、一緒に楽しんでくださいね^ ^ (2018年1月11日 1時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - あくあさん» あくあ様、いつもありがとうございます! 青さん派のあくあさんには申し訳ないですが、不器用すぎる赤さんとの旅行、一緒に楽しんでいただけるとうれしいです! (2018年1月11日 1時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - psycheighterさん» psycheighter様、コメントありがとうございます^ ^ 有り難いお言葉、うれしいです…! 彼らも大人なので、こんな恋愛していてほしいという、私の願望が詰まっておりますが…笑、最後までお付き合いいただけるとうれしいです。 (2018年1月11日 1時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 今1番更新が楽しみな小説です。私はすばる担なのですばるくんと幸せになったらいいなぁとドキドキしながら読ませて頂いてます! (2018年1月11日 0時) (レス) id: 6cdacb0f72 (このIDを非表示/違反報告)
あくあ - ほんと不器用すぎて切なすぎる。けど、それも赤さんっぽさが出てていい。あぁ〜映画化してほしい。笑 (2018年1月10日 23時) (レス) id: 4e4eb3dcc1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たまご | 作成日時:2018年1月2日 17時

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