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鍋底の不安【赤】 ページ35

たまに、このひとの嗅覚が怖くなる。



結局ごはんを食べることはないまま、野生の猫みたいに丸くなって寝ている彼の寝顔を見つめ、
その額に張り付いた前髪をそっと分けながら、

私はふと、そんなことを思う。


起きたら食べられるように、今のうちに煮物の続きを作っておこうかな…。


静かにキッチンに戻ると、窓の外の風が強くなっていることに気づいた。

そういえば、朝のニュースで台風が近づいてきてるって言ってたっけ…。



まな板の上に出しっぱなしになっていた鶏肉を、熱して油を引いたお鍋に放り込む。

それを菜箸でかき混ぜていたら、さっきの自分の動揺がフラッシュバックして、



ーーやっぱりもう、ヤスくんと会うのはやめようと、心に決めた。



彼のことを好きでいていいと許されている間は、
気配を消しながら、彼の負担にならない範囲内で精一杯好きでいて、


もう好きでいるなと言われた後も、
ひとりでも生きていけるように、ちゃんと仕事で自分の足場を作っておく。



そういうふうに生きていくって、ずいぶん昔に決めたじゃないか。



それなのに…もう取り返しのつかないほど、
道を踏み外してしまっている気がしてーー


胸を占める漠然とした不安に気を取られて、
ふと料理をする手が止まっていたことに気づく。



お鍋の底にすっかりこびりついてしまった鶏肉を、

私は必死に、菜箸ではがそうとした。

猫の噛み跡【赤】→←すがりついた藁【赤】



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たまご(プロフ) - ぐさん» ぐさま、嬉しいお言葉ありがとうございます!なんとか第2幕も開幕しましたので、続きも楽しんで頂けるように頑張ります^ ^ (2018年1月3日 12時) (レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - めちゃさん» めちゃさま、コメントありがとうございます!すばるくんのセリフ気に入って頂けるの、すごく嬉しいです…幽霊、いいですよね…w 引き続きよろしくお願いします^ ^ (2018年1月3日 12時) (レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 初めまして。"既に投票済みです"となるのを分かっていても評価を押したくなるくらいこのお話が大好きです(*^◯^*)続きも楽しみにしています! (2018年1月3日 1時) (レス) id: 378be249b3 (このIDを非表示/違反報告)
めちゃ(プロフ) - すばるくんのセリフの一言一言が全部好きです 私も幽霊になりたい (2018年1月2日 18時) (レス) id: 2487310cb4 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - なつきさん» なつき様、ごめんなさい!続編設定、今解除しました。続きは準備中なので、もう少々お待ちいただけるとうれしいです! (2018年1月2日 17時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たまご | 作成日時:2017年12月22日 3時

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