そして、雪が降る【赤と青】

さよならの決意【赤】 ページ1

この部屋のチャイムを鳴らすのは、もう何度目のことだろうか。



24時間煌煌と照らされたマンションのエントランス、

その無機質なオートロックの呼び出し機械に、

私は慣れ親しんだあの部屋番号を打ち込む。



手が無意識にその数字の位置を覚えていることに、

…自嘲気味に笑いながら。



鍵は結局今日まで、もらうことはなかった。


この関係を続けていれば、それは当然のことだった。





ーー…最後だ、今日こそが、最後。



少し震える手を握りしめ、そう決意しながら応答を待つことすら…

実はもう、三度目のことでーー…





冬の初めのある日、
時刻はすでに、午前0時半を回っていて



…少し話して、始発までどこかのファミレスででも時間を潰そう。


自分に言い聞かせるようにそう決意するけれど、もともと駅からのアクセスの悪い地にあるこのマンションにこの時間に訪れている時点で、帰ることなど考えてないのかもしれないーー…


そんな自分の無意識な浅はかさに、改めて忌々しさを感じながら…







「…ん、入れ」



静まり返ったロビーにプツッという電子音がすると同時に、
彼の声がして、オートロックのドアが開く。



コツコツと廊下に響くヒール音。





エレベーターで上がり、部屋の前に立つと、





ひとつ息を吐いて、その扉を開いた。

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