街灯の下の反響【黒】 ページ38
「…お前、なんかあったろ」
「…なんもあらへんよ」
…ぐっさんから電話があったんは、その日いくつか上の空んままこなした、仕事の帰り道やった。
思ってたより遅くなって、もう日の暮れた道を早足で歩きながら
かじかむ指先
家で待っているであろう彼女にメールを打っていた時やった。
「なんもなくてアレならお前はプロ失格だな」
…俺はなんも
言い返せんくて
街灯ん下 道端で立ち止まる
…なんも知らんこの人に
切り捨てるように言われたその一言が
窒息しそうな俺を追い詰めていた
「…あとお前、そろそろちゃんとしろ」
「何…」
…やけど多分この人は
いつだって正しいことしか言わへんこの人は。
俺の態度を反抗やと受け取ったようで、言葉を畳み掛ける…
「いつまでも無自覚に女の家から通ってられると思うか？」
「ーー…」
受話器に耳当てとるはずやのに、声がえらい遠くに聴こえて
巻いとったマフラーが肩からずり落ちて
俺は自分が俯いていることを知る
「別れろとは言わねえけど節度ってもんがあるんだよ、責任を考えろ」
責任…
“…妊娠、したかもしれない”
“したかもしれない”
その添えられた言葉に
まだ確定したわけやないやろって どっかですがっとる自分に吐き気がするーー…
「お前はあいつら引っ張ってく立場なんだからさ」
ーー…天下、
ってなんやろ、どこにあるん…
それは、Aのおらん場所なんやろか
…なんでや、俺はみんなを幸せにしたいだけやったのに
必要と
されたいだけやったのにーー…
「玄関丸見えのアパートからお前が出てくるとこ見られたら言い訳しようがあるか？ 無理だろ？」
“産もう”
“無理だよ…”
…風が吹く
吹き溜まった落ち葉がその冷たさに驚いたようにまた舞い上がる
冬なんて
くだらない俺と一緒に
消えてしまえばええのにーー…
ーー…
そん時、よれよれのマフラーからAの匂いがして
俺は左手でそれを掴んで顔をうずめる
…あったかくて柔らかくて
泣きそうやった…
“これ…侯隆に似合いそうだなあと思って”
香水と交換でもらったあの日のプレゼント
「ーー…」
…俺がおらん間も
あの部屋であいつは冬になる度にこのマフラーを大事に取り出してきた
Aーー…
“無理だよーー…”
「ーー…無理やない」
「あ…？」
「無理やない、あいつを幸せにできるんは俺だけやからーー…！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 511人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆき姉(プロフ) - 年末年始と忙しくて気になっていたけど我慢してやっと、読めました！あここで名前が？って予想外だったので戸惑った笑ほんまのほんま、の感想は完結した時に。でもでもだけど。やっぱりたまごさんのかくeightが好きです。 (2021年1月7日 18時) (
レス) id: f0721a3442 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - はるさん» はるさん、コメントありがとうございます、とても嬉しいです。ちょうど「CHANCE」が出たころっぽかったのでそのイメージでしたが、マドモアゼルココもいいですね！引き続き見守っていただけると嬉しいです。 (2020年12月17日 3時) (レス) id: 0669d21b3c (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 鳥肉なし、愛がたっぷりのオムライスがリアルっぽくて切な愛おしいです。シャネルの香水はマドモアゼルココが大好きなので、それをイメージしました。 (2020年12月15日 11時) (レス) id: c38ac67a9b (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - kukuさん» kukuさんコメントありがとうございます、嬉しいです！ほんと励まされます…！どうか引き続き楽しんでいただけますように！ (2020年12月7日 22時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ぽてとさん» お返事ありがとうございました！ようやくご自身のお名前出てきたと思うので、どうか引き続きお楽しみいただけますように…！ (2020年12月7日 22時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：たまご
| 作成日時：2020年12月4日 16時
