トラガスとロック

have a nice trip ページ40

翌日。デビューライブ。

痛みと興奮で一睡もできずに朝を迎えた。




真っ赤に腫らしたおれの耳を見て、
マルは奇声を発し、
おーくらは怯え、
亮はリアルに引いた。


横ちょは、"まぁ、ええやん"と眉を下げ、頭ポンポンしてくれた。


信ちゃんは、"大事な日にこないな穴開けて何考えてんねん！"とドツキながらも、"消毒ちゃんとしいやー"って気遣ってくれた。



渋やんはいつものようにソファーに転がって、ハーモニカであの曲を吹いていた。
ここではない、どこか遠くを見ながら。

暫くして皆に弄られてるおれに気づいて。
"よぉ 坊や" って、口角を上げた。





開けたてのトラガスが、ズキンとした。
おれの心は 決まった。





・





"エイト！エイト！エイト！エイト！…"





大「やばっ！この歓声っ」

「嬉しいなぁ、沢山来てくれてんねやなぁ。」

錦「アカン、めっちゃサブイボたってきた！」

村「マル、お前びっちゃびちゃやんけ！」

丸「…すばる、」

渋「よーしよしよし。」ｷﾞｭｯ

丸「………♪」

大「きっしょ！」

横「じゃマルが落ち着いたとこでえーか？やるで。」



ｶﾞｼｯ



丸「…ではっ。」ｵﾎﾝ


丸「いよいよ俺たちの旅立ちだー！」


「「「「うぇーーーい！」」」」


丸「長い船出になるよう漕ぎ続けてっ、世界中回ってやろーぜーっ！」


「「「「うぇーーーい！」」」」




丸「章大ー！」


「うぇーーい！」


大「突然呼び捨て！」
横「受け入れ早っ！笑」


丸「お耳、ジンジンしてるかぁーい！？」


「いたーーーーい！！」


丸「ウサギさんみたいやでー！！」


「ピョンピョーーン！」



錦「何で擬音！？」
大「声高っ！笑」
村「ええから早くしろて！笑」ﾍﾞｼｯ



丸「こんなアホな俺らやけども、果てしない未来へ向かってぇ…」


丸「ハバ ナイス トリーーーップ！！！」


「「「「うぇー…、、ぶわっはっはっはっ！！」」」」




錦「何で送り出す側！？笑」

横「ホンマにアホやわ！笑」

大「アカン、スティック持たれへん！爆」

村「たつ、泣いてもーてるやないか！爆」

丸「感極まるのは早いで！」

村「お前のせいや！笑」ﾍﾞｼｯ




マルの言葉に皆で崩れ落ちて、張りつめてた空気がええ感じに緩んだ。


ひとり、またひとりと出て行く度に大きくなる歓声。



そっと隣を見ると、


かっと目を見開いてTシャツの左胸をぎゅっと掴んで、たぎる血と感情をそこに集めて、高めているような渋やんがいた。

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