51話 ページ11
また突然の事で驚くが、あの時のような不愉快な感じはしない。
抱き寄せられれば、体は密着する。服越しでも分かるほどに彼の体には筋肉が付いていて、肉付きの悪い自分とは真逆の体格に少し羨ましくも感じた。
「俺は大丈夫か」
上から囁くように、彼の低い声が聞こえる。
何でこんなこと聞くんだろう。
今更、大丈夫かどうかの確認なんて。
「もちろん、寧ろ安心しますよ」
「そうか」
「兵長は大丈夫ですか？」
「当たり前だろ、俺から触れてんだ」
「嬉しいです」
少なからず、彼には好ましく思われてる。
それは本当に嬉しくて、気が浮かれてしまいそうだ。
そしてそういうふうに思っている自分は、彼の事が好きなんだろう。
いつからかは正確には分からない。
でも、2年前の兵長の執務室で口付けした時には、恐らく僕は彼の事が好きだったんだろう。
「お前、あの時どうして泣いてた」
「あの時？」
「今日ひっくり返ってただろ」
「……あれは」
もう亡き友人の後ろ姿。
思い出すだけで悲しいし、寂しいし、懐かしくて、暖かい。
「昔の友人の事を思い出して、無意識だったんです。でも、辛い訳じゃないんですよ」
「昔の友人？」
「孤児院の時から訓練兵の時までずっと一緒だったんです、でも、その、クィンタ区の日で」
「……ああ、そうか」
彼の言葉は少し哀しそうで、申し訳なさが感じ取れた。
僕の目線からじゃ今は彼の顔が見れない。
かと言っても、いつも殆ど変わらないのだが……驚くこともほとんどないし、嬉しいからと、朗らかに笑う人でもない。
かと言って無情という訳でもないのだ。
表に出ないだけで、感じていることは沢山あるだろう。意識して見てみると微かに変化はある。
僕はその変化が見たくて、引き寄せられてもたれ掛かっていた身体を起こし、兵長の顔を見上げた。
視線が交わる。相変わらず無表情だし、目の下のくまは濃い。
自分と正反対の髪色が、とても綺麗だった。
強面、傍から見ればそうだろう、僕も初めて見た時は怖いと思った。
でも、彼と触れ合い時間を共にすると、それが彼の魅力であり、個性なのだと知る。
灰色が掛かった彼の青い瞳は、静かに僕を映していた。
「どうした」
兵長は静かに、独り言のように言った。
彼の薄い唇から漏れるその声は、僕の体に染み込んでいくように、心地よく馴染む。
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やし野(プロフ) - Soleilさん» ありがとうございます､絵を褒めてもらえるのは嬉しいです!! かっこいいと言われて主人公くんも喜んでるはず!笑 (2018年7月10日 17時) (
レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
Soleil(プロフ) - イラスト拝見させて頂いたのですが、めっちゃかっこいいですね！絵がとてもお上手ですね (2018年7月10日 14時) (レス) id: bc0cb92646 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - Rainさん» 嬉しいお言葉たくさんありがとうございます〜！マイペースに頑張っていくので宜しくお願いします！！ (2018年7月2日 17時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
Rain - すっごく面白いです！！これからも頑張って下さい！応援してまーす！更新楽しみにしてます！ (2018年7月1日 22時) (レス) id: e08e47c2f9 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - Soleilさん» ありがとうございます。コツコツ書いていくので今後とも宜しくお願いします(^O^) (2018年6月25日 21時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やし野 | 作成日時：2018年3月31日 23時
