Episode9 支度 ページ11
私は異様に距離が近いTordの胸板を押し返し、改めて椅子に座り直した。Tordは私の行動に目を丸くしていたが、倒れた椅子を起こすと素直に椅子に座る。
『まあそういう事だ。だから金銭面は気にしなくてもいいよ。気が済むまでここにいればいい＿＿って、言いたい所だけどTordは大丈夫？その、軍の事とか』
「まあ俺がいない間研究所を空けて昇進に響いたらやっかいだが……上のヤツら禄に休暇もくれなかったからな。寧ろ迎えが来るまでAのとこでゆっくりさせて貰う気でいたし」
頭をかきながら珍しく面目なさそうに言うTord。一方私は頼られた嬉しさからニヤけが止まらなかった。彼への愛おしさが爆発しそうだ。
昂る気持ちを抑え一呼吸置き私は口を開いた。
『そうと決まれば早速行動だね。服も足りないだろうし今日は買い物にでも行こうか』
「！…ありがとな、A」
へにゃりと笑いながら笑顔を向けるTord。表面上こそ平静を保った私だったが、脳内ではTordの笑顔に悶え苦しんでいる。尊さで胸が押しつぶされそうだ。
＿＿その後、少し会話をした私達は空になった食器をシンクに下げ、早速外へ出る準備を始めた。Tordは替えの服が無い為昨日と変わらず赤いパーカーのままだ。
私はTシャツにカーディガンという適当な服を選んだ後、部屋の外で待つTordの元へ足を進める。
『あ、そうだTord』
「何だ？」
『ちょっとポケットの中見せて』
そう言った瞬間、分かりやすくTordの表情が不機嫌に歪んだのが見えた。そんなところも可愛いなと思いつつ、私はTordの目の前に手を差し出す。
『まだあるんだろ、銃』
「……」
『絶対まだ持ってるな？早く出しなよ。じゃないと外出れないし』
黙秘を貫き私と距離を取り始める彼にムッとしつつ、私は引き続きTordへ手を差し出した。
『仮に落としでもしたら私達捕まっちゃうよ。Tordは持ってないと落ち着かないのかもしれないけど…お願いだよTord。帰ったら直ぐに返すから』
「＿＿………はぁ」
Tordは懇願する私を横目で見ると、深い溜息をつきしぶしぶ銃を手渡してきた。彼には申し訳ないが警察に嗅ぎ付けられでもしたらとんでもない事になるからな。
私はほっと胸を撫で下ろし、銃を靴箱の中へそっと仕舞った。その様子をTordは見届けると、ぶっきらぼうに私の手を掴みドアノブへ手をかける。
「ほら行くぞ」
『えっ、ああ、うん』
Tordは早く帰って銃を取り戻したいから私の手を引いたのかもしれないが、結果的に彼と手を繋いでいる状況に私は気が気じゃなかった。
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ベンザチャン(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです！！Tordと夢主の相性が抜群ですね！！！（？）無理せず更新頑張ってください！ (2023年1月25日 8時) (
レス) id: 7db4a09c58 (このIDを非表示/違反報告)
大祝 - お久しぶりですー!この作品大好きだったので更新嬉しいです! (2022年10月28日 17時) (レス) id: e74f7c17fb (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - いつも楽しみに待っていました！これからの展開を楽しみにしています！ (2022年10月28日 17時) (レス) @page29 id: e11f93c1d4 (このIDを非表示/違反報告)
omio(プロフ) - 更新待ってました！来る日も来る日もチェックさせて頂いていましたが本当に嬉しすぎてやばいです!!次の更新も心待ちにしてます！ (2022年10月27日 18時) (レス) id: 0610d9afb5 (このIDを非表示/違反報告)
ベンザチャン(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです！相変わらずの豊富な語彙力羨ましいです…！無理せず更新頑張ってください！！ (2022年10月27日 8時) (レス) id: 05631b7c6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はちまき | 作成日時：2022年7月10日 21時
