僅かな余裕 ページ39
無惨の腕が斬れた。
ここにいる誰かではない。
切れ味の悪い刃物だ。特徴的な断面。
そうまさに、伊之助の。
(伊之助君!?)
そこにいるのか。
Aは身を震わせた。
また同じ断面で、再生した腕が斬れる。
やっぱりいる。
どうやってか身を隠している。
ヒュカっと無惨の攻撃が向かう。
ヒラッと切れた紙が舞い、伊之助、カナヲ、善逸が姿を現した。
「いだァァ!!やだァァもォォ!!」
こんなときでも叫んでいる善逸。
「くっ・・・」
カナヲは歯を食いしばる。
「いっ・・・てェェェ!!この糞虫が!!」
伊之助がそう吐き捨てる。
(生きてる・・・よかった!!)
Aは目を輝かせた。
「死んでたまるかボケェ!!」
三人の生存を喜ぶ悲鳴嶼に、上官を上官とも思わぬ伊之助が叫んだ。
さっき三枚分飛んだ紙を、見せびらかすように広げる。
「あと俺この紙いっぱい持ってるからな。いっぱい拾ってきてんだぜ!!何枚切られても山程あるんだよテメェの攻撃なんざ・・・」
話し続ける伊之助に攻撃が向かった。
「無駄口をきくな!!」
誰かが叫ぶ。
(いや本当、その通りだよ・・・)
無惨と対面してもブレない伊之助。
Aはクスッと笑う。
伊黒の赫く染まった刀が無惨に入った。
(時透さんの・・・!)
上弦の壱を突き刺した、あの時と同じだ。
即再生しない。
(そうか。あの赫刀だと再生に時間がかかるんだ。)
「花の呼吸 四の型 紅花衣」
「雷の呼吸 壱の型 霹靂一閃」
「つまらぬ小細工ばかりするな!!蠅共が!!」
「蛇の呼吸 参の型 塒絞め」
戦闘に僅かに余裕ができた。
悲鳴嶼が鉄球と手斧をぶつけ合わせる。
悲鳴嶼の刀も赫くなった。
「冨岡ァァァ!!受けろォォ!!」
実弥が冨岡と刀を合わせ、二人の刀も赫くなる。
伊之助が持って来た紙を、各々拾って額につけた。
これで無惨からは見えなくなるらしい。
何かの血鬼術だろうか。
格段に戦いやすくなった。
かなり無惨を追い詰められて来ている。
夜明けまであと一時間三分。
「善逸!!カナヲ!!俺もアレやりてえ刃ァ赫くするやつ!!」
はしゃぐ伊之助。
気持ちはわかる。
というか、二刀流の伊之助ならぶつけ合ってできるのではないか。
カナヲは冷静に分析していた。
「簡単にできるものじゃないから!!まず腕力が同じくらいなきゃ・・・」
『玻璃の呼吸 弐の型 繊月一閃』
Aの攻撃が無惨を襲った。

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ひかる(プロフ) - 美咲さん» ありがとうございます。嬉しいです! (2024年6月1日 8時) (レス) id: c4c9e482b4 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - misakimiさん» 返信遅くなってすみません!ありがとうございます! (2024年6月1日 8時) (レス) @page45 id: c4c9e482b4 (このIDを非表示/違反報告)
美咲(プロフ) - 「推しの代わりに私が死ぬ」をモットーにしてる夢女です。義勇さんの右腕がなくなる代わりになれて嬉しいです。ありがとうございました。涙が止まりません。 (2024年5月30日 12時) (レス) @page45 id: ba38d82983 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - お疲れ様でした。今日一気読みさせていただきました。最後の義勇さんの泣き笑いの表情が浮かんで泣かされました。とても良い素敵なお話でした。不器用だけど優しい優しい義勇さんをありがとうございました。 (2024年5月20日 20時) (レス) @page45 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - ミユさん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです(*^^*) (2024年5月7日 7時) (レス) @page42 id: c4c9e482b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひかる | 作成日時:2024年3月9日 9時