74話 ページ24
「あ……ごめん。その、声が聞きたくなったから。……寝てた？ 今忙しい？」
『別に』
「少しの間でいいから、話したいんだけど……」
『電話じゃなくて直接会えばいいだろ。今どこにいる？』
「今は家だけど……出れないから、会えない」
『は？ 監 禁されてんのか？』
「ちがうよ、こんな時間に外に行けないし……色々あって」
ザリッと足を止めた音が聞こえて、彼が本気で心配していることが伝わった。
目を向けた先にある時計の短針は一を指している。
学生が一人で出歩いていい時間をとうに超えていた。
『家出ろ、迎えに行く。待ち合わせ場所決めとけ』
「いいよ今日は……」
『会いたくねェの？』
「会いたいけど今日はいやだ」
『はあ？ ンな声でさっきから何言ってんだ』
はっきりと答えたAに対して、男は露骨に不機嫌になる。
いつ外出ても同じだろ、と暴論を吐いていたが一向に出かける様子がないことにわざと舌打ちをした。
『また嫌がらせか？ 合わねぇなら学校なんか辞めろ』
「ううん、学校が嫌ってわけじゃなくて……」
『そうやって毎度べそかくんだろ、お前』
「かいてないし、かかない」
『ってことは泣いたのか？ ガキだな』
鼻で笑われ、Aはムッと唇を尖らせる。
男の言う通りで否定ができなかった。
付き合いが長いからか、隠し事をしていてもこの男にはほとんどが筒抜けで。
すぐに言い当てられてしまうことが多い。
『本っ当に昔から変わらねェな、A』
男は昔の記憶を思い浮かべて電話越しにふっと笑う。
他愛のない通話はAの携帯電話が音も光も消えて電源すら付かなくなるまで続いた。
Aは仕方なく自室に入って扉の鍵を閉める。
必要最低限の家具だけを揃えたこの部屋は同じ年頃の女子と比べて明らかにかけ離れていた。
個性の暴走がいつ起こるか分からない、物を壊してしまうかもしれない理由で安易に手を出すことができずにいる。
毎日欠かすことなく傍にいた人物が見当たらない。
そのことだけで不安で押し潰されそうだった。
Aは布団を頭から被って涙で濡れた目を強く瞑った。
結局、止めどなく思考を巡らせたこの日は再び眠りにつくことは出来なかった。
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やおや(プロフ) - パイナップルさん» お返事が遅くなってしまい申し訳ありません…。ご感想ありがとうございます。亀更新ですが楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2023年2月5日 21時) (
レス) id: b7b6f6768c (このIDを非表示/違反報告)
パイナップル(プロフ) - すごく好きです！更新楽しみにしています！ (2022年9月14日 23時) (レス) @page19 id: 16127b2cec (このIDを非表示/違反報告)
やおや(プロフ) - すめしさん» ご感想ありがとうございます。所々謎の多い設定を詰め込んでますが、お話が進むにつれて明らかになるような構成となっておりますのでその点も含めて今後もお楽しみ頂ければ幸いです…！ (2021年4月20日 0時) (レス) id: 889f105f89 (このIDを非表示/違反報告)
すめし(プロフ) - めっちゃ面白いです…！個性についての説明がないので、どんな個性なんだ…と読んでいてワクワクします。これからも楽しみにしてます！！ (2021年4月17日 2時) (レス) id: 805a88b6fb (このIDを非表示/違反報告)
やおや(プロフ) - ポン酢さん» 貴重なご感想、応援をありがとうございます。嬉しい限りです。最終回をお届け出来るよう精一杯努めますので、今後ともよろしくお願いします。 (2021年2月7日 0時) (レス) id: c63586aa9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やおや | 作成日時：2021年2月1日 22時
