67話 ページ17
「……緑谷くん、蛙水さん、峰田くん」
「ケロ。梅雨ちゃんと呼んで」
既に動かないことを知るはずのない蛙水は、Aの右手を両手で優しく包み込んで「お水みたいに冷たいわね」と呟く。
蛙水が触れた感覚も感じ取れないほどに右手は悪化していた。
負傷した相澤を運ぶ三人の姿をAは納得がいかないまま見守る。
今は手助けすら何も出来ないことに、右手よりも胸の辺りがじくりと痛む。
込み上げる思いが涙となって溢れそうになり、痺れる左手で胸をぐっと押さえた。
「ごめんよ皆。すぐ動ける者をかき集めてきた」
長い階段を慎重に上っていき、出入り口に辿り着くと大きな扉が開かれた。
ネズミの容姿をしている雄英高校校長の根津の言葉を合図に、雄英の教師兼プロヒーローたちがぞろぞろと施設に足を踏み入れる。
「1−Aクラス委員長、飯田天哉！！ ただいま戻りました！！」
その先頭に立ち、施設から雄英までの果てしない距離を走り続けた飯田の声が施設全体に響き渡った。
蛙水と峰田が麗日の個性を頼りに相澤を預ける。
共に担いでいた緑谷は途中でピンチに陥ったオールマイトの元へと駆け出してしまっていた。
施設の外へ運ばれていく痛々しい姿の相澤を目にしたマイクは「……Aちゃん、よく頑張ったな」と今にも倒れてしまいそうな青白い顔のAの背中を撫でた。
一方、主犯格である顔に手のような装飾を付けた男は黒い靄の敵を連れてこの場から離れようとしていた。
逃げられる前にと隙を見てプロヒーロー、スナイプが弾丸を放って命中させる。
「今回は失敗だったけど……今度は殺すぞ。平和の象徴オールマイト」
痛みに動きを鈍らせていた男は怨嗟の声を残して黒い靄に姿を消す。
騒がしかった戦場は穏やかな静けさを取り戻した。
プロヒーローが相手にしている世界はヒーローを目指す子供にはまだ早すぎる経験だった。
後に起こる大事件など、知る由もなく。
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やおや(プロフ) - パイナップルさん» お返事が遅くなってしまい申し訳ありません…。ご感想ありがとうございます。亀更新ですが楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2023年2月5日 21時) (
レス) id: b7b6f6768c (このIDを非表示/違反報告)
パイナップル(プロフ) - すごく好きです！更新楽しみにしています！ (2022年9月14日 23時) (レス) @page19 id: 16127b2cec (このIDを非表示/違反報告)
やおや(プロフ) - すめしさん» ご感想ありがとうございます。所々謎の多い設定を詰め込んでますが、お話が進むにつれて明らかになるような構成となっておりますのでその点も含めて今後もお楽しみ頂ければ幸いです…！ (2021年4月20日 0時) (レス) id: 889f105f89 (このIDを非表示/違反報告)
すめし(プロフ) - めっちゃ面白いです…！個性についての説明がないので、どんな個性なんだ…と読んでいてワクワクします。これからも楽しみにしてます！！ (2021年4月17日 2時) (レス) id: 805a88b6fb (このIDを非表示/違反報告)
やおや(プロフ) - ポン酢さん» 貴重なご感想、応援をありがとうございます。嬉しい限りです。最終回をお届け出来るよう精一杯努めますので、今後ともよろしくお願いします。 (2021年2月7日 0時) (レス) id: c63586aa9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やおや | 作成日時：2021年2月1日 22時
