64話 ページ14
Aは強く願いながら指先で巨体に触れた。
目前の脳無の様子に変化はない。
痺れも痛みも訪れない右手は個性が発動しているかどうかの有無すら知ることができずに。
「――は？」
異変にいち早く気付いたのは、手の装飾を身につけた敵だった。
脳無はAを捕らえようと腕を上げていた。
だが、ピタリと動きを止めて自身の腹部に目を向ける。
そこはぶくぶくと腫れ上がるように変形し始めると、針を刺した風船のように勢いよく弾けた。
抉れた肉片が地面に散らばっていく。
奇声を上げる脳無。
瞬時に状況を理解した者は誰一人もいない。
「い……っ！！」
時間差でAの右手に個性の反動が起こった。
普段の痺れを優に超えた、骨折した箇所を鈍器で殴られるような激痛。
痛みで思わず涙が膜を張り、顔を歪める。
相澤を庇う形で敵を睨みつける中、爪で皮膚をガリガリと引っ掻く音がした。
「脳無に穴を空けた？ そんな個性を持ってるのやつが人助けなんかできんのかよ……？ ああ、でも……――つまらない夢と一緒に消しておけばいいのか」
血色の悪い手が目を見開くAの顔面に向けて伸びる。
恐怖に包まれてしまった体は何一つ動かず、咄嗟に身を守る行動をとることはできなかった。
時の流れが遅く感じる。
死を覚悟したのはこれで二度目だった。
また今回も何も出来なかったと、無力な自分の悔しさを堪えて強く目を瞑った。
「……本っ当かっこいいぜ、イレイザーヘッド」
敵の五指が顔に触れた。
冷えきった全身が震えるが、衝撃も痛みも訪れない。
背後で瀕死状態の相澤がAを守るために必死に個性を発動したのだと、敵の呆れた声で気づいた。
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やおや(プロフ) - パイナップルさん» お返事が遅くなってしまい申し訳ありません…。ご感想ありがとうございます。亀更新ですが楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2023年2月5日 21時) (
レス) id: b7b6f6768c (このIDを非表示/違反報告)
パイナップル(プロフ) - すごく好きです！更新楽しみにしています！ (2022年9月14日 23時) (レス) @page19 id: 16127b2cec (このIDを非表示/違反報告)
やおや(プロフ) - すめしさん» ご感想ありがとうございます。所々謎の多い設定を詰め込んでますが、お話が進むにつれて明らかになるような構成となっておりますのでその点も含めて今後もお楽しみ頂ければ幸いです…！ (2021年4月20日 0時) (レス) id: 889f105f89 (このIDを非表示/違反報告)
すめし(プロフ) - めっちゃ面白いです…！個性についての説明がないので、どんな個性なんだ…と読んでいてワクワクします。これからも楽しみにしてます！！ (2021年4月17日 2時) (レス) id: 805a88b6fb (このIDを非表示/違反報告)
やおや(プロフ) - ポン酢さん» 貴重なご感想、応援をありがとうございます。嬉しい限りです。最終回をお届け出来るよう精一杯努めますので、今後ともよろしくお願いします。 (2021年2月7日 0時) (レス) id: c63586aa9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やおや | 作成日時：2021年2月1日 22時
