第十八話 ページ19
ピピピッとタイマーの音と同時に、潮の糸が切れた。パシャッと軽く跳ねてヨーヨーが水面に落ちる。
プールの中に残っているのは、最後に落ちたそのヨーヨーだけだった。
「西園寺様、ヨーヨーの数はここで数えると他の方の迷惑になりかねません。外で我々だけで確認しましょう。」
「ふむ、確かにそうだな。」
ヨーヨー釣りのコーナーは意外と繁盛しているようで、子供たちが行儀よく順番待ちをしていた。潮たちは、それぞれ釣ったヨーヨーを持って廊下のベンチに腰をかけて同時に数を数える。
結果は一が6つ、潮が7つで僅差だったが潮の勝ちに終わった。
「ふ、ふんっ!どうだ私に負けた気分は!?なんでも言うことを聞くんだったな……どうしてくれようか…… 。」
嬉しさのあまり緩む頬を無理やり押さえ込んで、私はパンフレットを取り出すと催し物を再度確認していった。タピオカ、かき氷、人探しゲーム、謎解き脱出ゲーム…… 。
さまざまな出し物が並ぶなかで、潮の目を引いたのはコスプレ体験コーナーの文字。そういえば部活の企画案にそんなのが入っていた気がする。場所もそんなに離れていないし、ちょうどいいだろう。
「よし、一。コスプレ体験コーナーとやらに行くぞ。」
普段ピクりともしない一の表情筋が今回ばかりは少し引きつった気がして、なんとも言えない加虐心に煽られる。こいつも私がなにをさせるつもりなのか、薄々気づいているのだろう。
くっくっく……と我ながら薄気味悪い笑い方をしながら、半ば引きずるように一の手を引っ張って行くのだった。
◆◆
数分後、コスプレ体験コーナーの文字がデカデカと描かれた教室にたどり着くと、潮は意気揚々とそのドアを開く。
受付らしい机に座った生徒が、こちらに声をかけてカタログ、もとい衣装一覧を見せてくれた。
ペラペラとめくっていく。それはアニメキャラだけではなく、執事やサキュバスなど、コスプレではなく仮装にネーム変更した方がいいのでは無いかと言いたくなるラインナップになっていた。
正直、執事や神父服のコイツを見てみたい気持ちが強い。しかし今回の目的はコイツを辱めることであって、かっこいいコイツを見るためではないと己を律する。
そして奴は案内されるまま、私の指定した衣装を持って更衣室へと消えていった。
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作者名:闇鍋ソース&ナイフ x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mesemoaLOVE/
作成日時:2019年8月18日 20時