(85)スタート・バッド ページ46
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「中也、おるかえ」
「どうぞ、姐さん」
翌朝、中也の部屋へ尾崎が訪ねてきた。
尾崎自ら自分の執務室へ来る事など、長い付き合いの中でも数回しかないので、今彼は少し驚いている。
既に来ていた陽和も尾崎へ挨拶した。
「それで、用件なのじゃが、Aは何時もどれくらいの時間に来ておる?」
「そうですね…最近は知りませんが、少なくとも此の時間には居るかと」
「矢張りそうかえ…いや、そうじゃろうな…」
時計を見ると、時刻は既に10時を回っていた。
どう考えても此の時間に居ないのは可笑しい。
「Aさんに…何か?」
「嗚呼、可愛いAに菓子をやろうと思うてな。彼奴の部屋まで行ったのじゃが留守でのう」
「外仕事じゃねーのか?」
「いや、其の筈は無い。鴎外殿にも聞いた」
どうも妙だ。首領である森が違うと云うのだから、本当に外仕事ではないらしい。
中也はポケットから出した携帯電話を操作し、其れを耳へ当てた。
きっとAへ発信しているのだろう。
「チッ…駄目だ、繋がらねえ」
厭な空気が執務室へ充満していく。
中也の胸に不安の波が押し寄せた。
昨日あんな話をした次の日の事だ、何か大事を想像してしまう。
其れを悟ったのか、尾崎が落ち着いた口調で云った。
「焦るでないぞ中也よ、まだ何も決まったワケではないぞ」
「はい…判ってます、姐さん」
Aが探偵社の世話になった日から、中也の中には不思議な感情が生まれていた。
自分の知らないところでAが傷付くのがどうしても我慢ならない。
今彼奴が何処かで苦しんでるなら、全部放り出して助けに行きたいとさえ思うのだ。
無論、彼は其の
「……何してンだよ…」
尾崎の去った部屋で、彼の苦しそうな表情を陽和が気不味そうに見つめていた。
式はもう来週だというのに、どうしてこうも事が上手く運ばないのだろう。
「A……」
ポツリと呟かれた名前は、静まり返った執務室によく響いた。
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ヤマダノオロチ(プロフ) - Yuukiさん» ありがとうございます!やっと構想がまとまってきました。これからもよろしくお願い致します! (2017年2月18日 23時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
Yuuki(プロフ) - とても面白かったです!スランプで大変だと思いますが、これからも頑張ってください!応援してます!! (2017年2月18日 23時) (レス) id: 3720d37733 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 天さんさん» コメントありがとうございます!上から目線だなんてそんな事無いですよ!?お褒めに預かり光栄です(>_<)最近はラブソングばっか聴いてて、主と中也くっつけたい〜とか考えてます(笑)これからも頑張ります! (2017年2月14日 20時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
天さん - う、上から目線で失礼しましたぁああッ!! (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
天さん - スランプ大変ですよね…文章とか読みやすくて好きです!頑張ってください(*´ω`*)ちなみに、私はスランプの時は曲を聞いてます。曲聞いてるとネタがポンポン出てきますので…!これからも応援してます(´˘`*) (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2016年9月4日 20時