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(78)深夜1時半 ページ39

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医務室ヘ入ると直ぐにベッドに横たわる婚約者の姿が目に入った。

彼女は中也に気付いたのかゆっくりと身体を起こし、「おかえりなさい」と笑う。



「体調は。何があった」

「もう大丈夫です。少し貧血だっただけで」



ベッドの傍に備えられた椅子に腰掛けた中也が小さな溜息を吐いた。



「お仕事中だったんですよね、ごめんなさい」

「別に良いが、今日は家に居ろって云っただろ」

「忘れ物に気付いて取りに来たんです。ごめんなさい」

「はぁ…だったらちゃんと連絡しろ」



伏せられた長い睫毛に目がいった。
白い肌に降ろされた長い髪。改めて此の女の美人さを思い知る。

暫くの間お互い黙っていたが、不意に陽和が此ンな事を中也に告げる。



「…中也さん」

「あ?」








「抱いてください」




。。。





Aは丁度拠点に帰り着いていた。
着替えを済ませ、借りた衣装を部下に任せてデスクに座る。

もう大分遅い時間だが、まだ帰って寝るわけにもいかない。


「A」

『鍵は開いています。どうぞ』


静かに入ってきたのは先程名を呼んだ人物、尾崎紅葉だ。
Aはソファの前に置いてあるローテーブルに適当な湯呑みを置き、煎茶を淹れた。

尾崎は軽く礼を云ってソファに座る。
Aはデスクの椅子に腰掛け、彼女の方を見た。


『此ンな遅い時間にどうしました。もうご就寝されたものと思っていました』

「偶には可愛い娘と夜更しも良いと思っての」

『そうですか』


柔らかく笑んだAを同様に尾崎も見つめた。
其れから煎茶を少し啜って、彼女は此ンな事を言い出す。


「あまり口出ししない方が良いと思っておったが、状況が状況なのでな。まあでも此れから云うのは(わっち)の独り言じゃ」


何が独り言だ、完全に聞かせに来てる。と思ったAだが、其処は静かにしておく。
何より話の先が全く読めないので突っ込みようが無い。


「未だ気付かないか」

『……嗚呼…成る程』


何の事か悟ったAが小さく笑う。彼女はさっき淹れた紅茶を1口飲んでから、もう1度其の唇を開いた。

尾崎は"独り言"への応えを待つ様に黙った侭だったが、其の口元もまた、緩く弧を描いている。


『態となら、何時もより少し意地悪ですね。姐さん』

「何故そう思う?」

『だって…』


Aの笑みが自嘲的なものに変わったのを、尾崎は見た。



『今更気付いても、只辛いだけじゃないですか』

「…そうじゃのう」







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ヤマダノオロチ(プロフ) - Yuukiさん» ありがとうございます!やっと構想がまとまってきました。これからもよろしくお願い致します! (2017年2月18日 23時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
Yuuki(プロフ) - とても面白かったです!スランプで大変だと思いますが、これからも頑張ってください!応援してます!! (2017年2月18日 23時) (レス) id: 3720d37733 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 天さんさん» コメントありがとうございます!上から目線だなんてそんな事無いですよ!?お褒めに預かり光栄です(>_<)最近はラブソングばっか聴いてて、主と中也くっつけたい〜とか考えてます(笑)これからも頑張ります! (2017年2月14日 20時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
天さん - う、上から目線で失礼しましたぁああッ!! (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
天さん - スランプ大変ですよね…文章とか読みやすくて好きです!頑張ってください(*´ω`*)ちなみに、私はスランプの時は曲を聞いてます。曲聞いてるとネタがポンポン出てきますので…!これからも応援してます(´˘`*) (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2016年9月4日 20時

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