(76)会合 ページ37
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「…中原様!お待ちしておりました」
門の所で車を降りた途端、其処へ立っていた小太りの男性が中也へ声を掛けた。
車内で寝ていたAは、窓に寄りかかっていたことによってついた寝癖と外していた伊達眼鏡を直して中也の後ろに続く。
「こんばんは。今宵はお招きいただきありがとうございます」
「お出でくださって光栄だ。後ろの彼は?」
「嗚呼、新しい部下です。ほら挨拶しろ」
中也に促されて前に出て、云われた通りに口を開いた。
元々ソプラノよりアルトに近い声は別に繕う必要はないだろう。
『初めまして、Aと申します』
「初めまして、私は奥野だ。よろしく」
『よろしくお願いします』
スッと出された手を握り返す。
見た目気の良さそうな男だ。まあ"見た目"なんてもの此の世界では信用する為の材料にはならない。
現に今、Aは見た目で他人に嘘を吐いている。
「随分と華奢な坊っちゃんじゃないか、教育係にされたんですか?」
「まあ其ンな所ですかね」
会場に着くと中は人で溢れていた。
"会合"なんて云うから、何か堅苦しめの話し合いかと思っていたが、どうやら其ンなのは建前で、要はお酒を飲みながら楽しく意見交換、と云った所だろうか。
何時ぞやの任務を思い出す。
只、今日は…あー何と云うンだっけかこういうの。
一言で云うと…そうだ、
『………むさい』
「ええ?まあ男ばかりですからなぁ!けど、別に悪くないでしょう?」
ガハガハと笑った彼はかなり酔っていると見た。
無用心だな全く。中也でもこういう場では控えるだろう。勿論、私も。
此の前はつい自棄酒なんてしてしまったが、反動の強さを知ったので2度と彼処まで飲む事はしないと己に誓った。
「……失礼、一寸」
ポケットで震えた携帯電話を相手に見せて、中也は1度扉の外へ出た。
部下の名前が光る画面をタップして其れを耳に当てると、「失礼します、幹部」と声が聞こえてくる。
「嗚呼、俺だ。どうした」
<羽須美様…えっと、陽和様が!>
「…?」
慌てた口調で自分の婚約者の名前を出した部下に疑問符を浮かべる。
何かあったのは確かだが、彼奴は今日俺の
<陽和様が倒れて、今医務室に運ばれました>
「はあ?今日は向こうに居ろって云ったぞ俺ァ」
<我々もそう聞いていたのですが…>
「…チッ、とりあえず戻る」
そう電話を切った中也は、其の侭Aに繋いだ。
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ヤマダノオロチ(プロフ) - Yuukiさん» ありがとうございます!やっと構想がまとまってきました。これからもよろしくお願い致します! (2017年2月18日 23時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
Yuuki(プロフ) - とても面白かったです!スランプで大変だと思いますが、これからも頑張ってください!応援してます!! (2017年2月18日 23時) (レス) id: 3720d37733 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 天さんさん» コメントありがとうございます!上から目線だなんてそんな事無いですよ!?お褒めに預かり光栄です(>_<)最近はラブソングばっか聴いてて、主と中也くっつけたい〜とか考えてます(笑)これからも頑張ります! (2017年2月14日 20時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
天さん - う、上から目線で失礼しましたぁああッ!! (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
天さん - スランプ大変ですよね…文章とか読みやすくて好きです!頑張ってください(*´ω`*)ちなみに、私はスランプの時は曲を聞いてます。曲聞いてるとネタがポンポン出てきますので…!これからも応援してます(´˘`*) (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2016年9月4日 20時