重力、夢中力…弐｡【中原中也】

(73)どう思っていますか。 ページ34

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家に帰らないと着替えが無いというと事なので、Aは1度家に帰ると部屋を出た。

其れに伴って中也も1度自分の執務室に戻る。




「おかえりなさい。早かったですね」

「嗚呼、一寸な」




中へ入れば、ソファの前にあるローテーブルで陽和が何やら作業をしている。




「…何だ其れ？」

「"イラストロジック"って知ってますか？」

「まあ、一応は。何で其ンなの遣ってる」

「1日此処に居るのも退屈ですし、折角遣り方を教えてもらったので」



確かに此奴には仕事も無いし、どうしたって暇か。と中也は納得した。

誰に教えてもらったかはよく判らないが、其処迄興味も無いので、自分もデスクに座って書類を眺めた。




「…中也さんは、Aさんをどう思っていますか？」

「あ？A？」

「ええ、Aさんです」




"どう"とは。中也は考えた。

長年一緒に仕事を遣ってきて思った事…と云えば、まあ少なからずあるが。
其れを素直に云うにも何かこっ恥ずかしい。



「別に…只の腐れ縁な同僚だ、あんな奴」

「へぇ…」

「手前から聞いといて何だよ其の反応」



陽和の興味無さ気な返事に中也は眉間に軽く皺を寄せる。
少し意地悪がしたくなって中也も彼女に聞いてみた。



「手前には、そういう相手は居ねぇのか？」

「…そうですね…居ましたよ」



手を止めて、何かを思い出す様に目を細める陽和。
其の表情は何処か傷付いている様にも見えた。




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