(70)太陽 ページ31
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「失礼します。此方、」
「羽須美
「おう。とりあえず座れよ」
案内役を返し、2人
Aが置いていった檸檬茶を出すと、羽須美陽和は花の様に笑ってお礼を云った。
「中原中也だ。改めて、これからよろしくな」
「はい、よろしくお願いします」
第一印象は『正反対』。
如何にもお嬢様といった仕草も言葉も、あまり此処では見慣れないレースのあしらわれたワンピースも、フワリと笑う其の笑顔も。
月と太陽。といったところだろうか。
「女に聞くのは失礼だとは思っているが、歳はいくつだ?」
「18です。中原さんは?」
「21だ。成人もしてねぇ女が、随分行き急いでるンだな」
皮肉のつもりだった。
だが彼女は傷付いたように困った笑いを浮かべる。
其れに気付いた中也は「やっちまった」と思い、とりあえず謝罪する。
「…悪りぃ、お前も望んで此ンな早い婚姻結ぶわけねえよな。配慮が足りなかった」
「良いんです。お気になさらないでください。今更私には何も無いので」
「どういう意味だ?」
「世の中、どうにもならないものというのがあるンです」
何時しか聞いた事がある様な話だ。
"どうにもならない事"。其ンなの、此の世界で厭という程見てきた。
今回の事だって……
「って、すみません。これから一緒の時間を過ごしていくのに、始めが此ンなじゃいけませんよね!」
サラサラとした薄茶色のロングヘアーを揺らしながらまた彼女は笑う。
あまり慣れない類の笑顔に不覚にも心臓が大きな音を鳴らした。
此れ迄見てきた、冷たくも心地の良い、月光の様な笑顔とはまた違う。木漏れ陽の様な温かい笑顔。
見なくなった途端に四六時中頭に浮かぶ様になるのは何故なんだろう。
「まあ、式までは日があるらしいからな。お互い徐々に慣れていけばいいだろ」
「はい、そうですね。ありがとうございます」
「……手前はよく笑うンだな」
「ええ…笑っていないと、何もかもつまらなくなりますから」
______笑ってンじゃねえよ!
______可笑しいから笑って悪い?
______手前…死なす!!!
「忘れる迄、私は待ちますよ」
「っ!?…何の事だ」
「何の事でしょうね」
此の太陽が時々作る"影"に、未だ中也は気づかな
い。
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ヤマダノオロチ(プロフ) - Yuukiさん» ありがとうございます!やっと構想がまとまってきました。これからもよろしくお願い致します! (2017年2月18日 23時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
Yuuki(プロフ) - とても面白かったです!スランプで大変だと思いますが、これからも頑張ってください!応援してます!! (2017年2月18日 23時) (レス) id: 3720d37733 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 天さんさん» コメントありがとうございます!上から目線だなんてそんな事無いですよ!?お褒めに預かり光栄です(>_<)最近はラブソングばっか聴いてて、主と中也くっつけたい〜とか考えてます(笑)これからも頑張ります! (2017年2月14日 20時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
天さん - う、上から目線で失礼しましたぁああッ!! (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
天さん - スランプ大変ですよね…文章とか読みやすくて好きです!頑張ってください(*´ω`*)ちなみに、私はスランプの時は曲を聞いてます。曲聞いてるとネタがポンポン出てきますので…!これからも応援してます(´˘`*) (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2016年9月4日 20時