(56)鬼ゴッコ ページ15
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追いつけない。
足の速さでは圧倒的に私の方が上だ。
だが、入り組んだビルの廊下では速さだけでは追いつけなかった。
所々
『…疲れるの嫌なんだけどな』
小さい頃から鬼ごっこは好きじゃない。
追うのも追われるのも嫌いだ。
足下に転がっていた木板を手に取り、ぶん投げる。
木板は縦に回転しながらブーメラン(返って来ない)宜しく一直線に風を切って、どうしてビル内に其ンな物があるのか知らないが、壁に立て掛けられた無数の鉄パイプに直撃した。
ガラガラガシャンと音を立ててパイプは倒れ、夫人の行く手を阻む。
『タッチ』
「っ、離しなさい!!」
胸に当てられた銃口が震えている。
所詮此の女も一般人なんだ。だから今迄他人の手を借りて私を殺そうとした。
『撃ってみると良いよ…其の人差し指を引くだけだ。簡単だよ?』
「な、何言って…」
『大丈夫、肺に穴が空く位で済むよ。其処、心臓の上じゃないもの。其れに震えてるしね』
「っ…」
正気か、と問うような目で私の顔を"見た"夫人。
何時も通り、その瞳に視線を這わせるだけ____
________の筈だった。
『ぐ、あっ…!!?』
「い"っ…」
目に刺すような痛みが走った。
思わず夫人を掴んでいた手を両目に当てる。
ハッとしてもう一度手を伸ばしたが、その手は届かなかった。
『待て…』
「…A!」
太宰の声が背中に響いた。
目の痛みは熱さに変わり、まだしっかり開く事ができない。
「どうした、また発作が…」
『違う、さっき夫人と目を合わせたら…』
「……なるほど、"共鳴"したんだね」
『は?』
「彼女の異能も、目を合わせることが条件というわけさ。共鳴と云えば恰好良いけど、云わば相打ち状態って事だね」
なら
段々と目の熱も引き、やっと元通りだ。
『…太宰、』
「判っているよ。今度は私が"鬼"になれば良いんだろう?」
『完全に不本意だけど、アンタにしか頼めないからね』
この先にあるのは屋上に続く階段だ。
夫人は其処に居るだろう。
何時かの様に、肩を並べて一段一段踏みしめて行った。
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ヤマダノオロチ(プロフ) - Yuukiさん» ありがとうございます!やっと構想がまとまってきました。これからもよろしくお願い致します! (2017年2月18日 23時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
Yuuki(プロフ) - とても面白かったです!スランプで大変だと思いますが、これからも頑張ってください!応援してます!! (2017年2月18日 23時) (レス) id: 3720d37733 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 天さんさん» コメントありがとうございます!上から目線だなんてそんな事無いですよ!?お褒めに預かり光栄です(>_<)最近はラブソングばっか聴いてて、主と中也くっつけたい〜とか考えてます(笑)これからも頑張ります! (2017年2月14日 20時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
天さん - う、上から目線で失礼しましたぁああッ!! (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
天さん - スランプ大変ですよね…文章とか読みやすくて好きです!頑張ってください(*´ω`*)ちなみに、私はスランプの時は曲を聞いてます。曲聞いてるとネタがポンポン出てきますので…!これからも応援してます(´˘`*) (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2016年9月4日 20時