検索窓
今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:146,980 hit

(56)鬼ゴッコ ページ15

.


追いつけない。

足の速さでは圧倒的に私の方が上だ。
だが、入り組んだビルの廊下では速さだけでは追いつけなかった。

所々(トラップ)の様に転がる家具やゴミ。




『…疲れるの嫌なんだけどな』



小さい頃から鬼ごっこは好きじゃない。
追うのも追われるのも嫌いだ。

足下に転がっていた木板を手に取り、ぶん投げる。

木板は縦に回転しながらブーメラン(返って来ない)宜しく一直線に風を切って、どうしてビル内に其ンな物があるのか知らないが、壁に立て掛けられた無数の鉄パイプに直撃した。


ガラガラガシャンと音を立ててパイプは倒れ、夫人の行く手を阻む。



『タッチ』


「っ、離しなさい!!」



胸に当てられた銃口が震えている。

所詮此の女も一般人なんだ。だから今迄他人の手を借りて私を殺そうとした。



『撃ってみると良いよ…其の人差し指を引くだけだ。簡単だよ?』


「な、何言って…」


『大丈夫、肺に穴が空く位で済むよ。其処、心臓の上じゃないもの。其れに震えてるしね』


「っ…」



正気か、と問うような目で私の顔を"見た"夫人。

何時も通り、その瞳に視線を這わせるだけ____



________の筈だった。




『ぐ、あっ…!!?』


「い"っ…」




目に刺すような痛みが走った。
思わず夫人を掴んでいた手を両目に当てる。

ハッとしてもう一度手を伸ばしたが、その手は届かなかった。




『待て…』


「…A!」



太宰の声が背中に響いた。

目の痛みは熱さに変わり、まだしっかり開く事ができない。



「どうした、また発作が…」


『違う、さっき夫人と目を合わせたら…』


「……なるほど、"共鳴"したんだね」


『は?』


「彼女の異能も、目を合わせることが条件というわけさ。共鳴と云えば恰好良いけど、云わば相打ち状態って事だね」



なら(はな)から相打ち状態と云え、と思ったが口には出さず、納得した声を上げた。

段々と目の熱も引き、やっと元通りだ。



『…太宰、』


「判っているよ。今度は私が"鬼"になれば良いんだろう?」


『完全に不本意だけど、アンタにしか頼めないからね』



この先にあるのは屋上に続く階段だ。
夫人は其処に居るだろう。


何時かの様に、肩を並べて一段一段踏みしめて行った。


.

(57)決着→←(55)憂い



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (121 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
383人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ヤマダノオロチ(プロフ) - Yuukiさん» ありがとうございます!やっと構想がまとまってきました。これからもよろしくお願い致します! (2017年2月18日 23時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
Yuuki(プロフ) - とても面白かったです!スランプで大変だと思いますが、これからも頑張ってください!応援してます!! (2017年2月18日 23時) (レス) id: 3720d37733 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 天さんさん» コメントありがとうございます!上から目線だなんてそんな事無いですよ!?お褒めに預かり光栄です(>_<)最近はラブソングばっか聴いてて、主と中也くっつけたい〜とか考えてます(笑)これからも頑張ります! (2017年2月14日 20時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
天さん - う、上から目線で失礼しましたぁああッ!! (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
天さん - スランプ大変ですよね…文章とか読みやすくて好きです!頑張ってください(*´ω`*)ちなみに、私はスランプの時は曲を聞いてます。曲聞いてるとネタがポンポン出てきますので…!これからも応援してます(´˘`*) (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2016年9月4日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。