【文スト】きっと純愛 (ページ8)

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きっと其の八ページ8

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云われた通り、十数米(メートル)先の的へ向けて発砲した。
弾丸は真っ直ぐに飛んで行き、的に命中する。中心から少しズレたが、当たって良かった。

横で見ていた構成員たちから「おお…」と声が上がる。

「黒蜥蜴のAだ。手前ら一寸見てもらえ」

はっ、と了承の意を示した構成員たちが、指示を待つように私の方へ向き直った。

「ちょ、幹部……私、指導なンてできませんよ…」
「手前の腕は確かだろう。型だけでも見てやってくれ」

幹部様直々に頼まれてはもう断る術も無い。
とりあえず、1人1人撃ち方を見せてもらうことにした。

「撃った勢いで手がブレてます」

「撃鉄を上げてからが遅いです」

「全体的に力が入りすぎです」

こんなこと、偉そうに云える立場でもないのに。

後ろめたく思いつつも、大まかに気づいた事を指摘したり、実演したりしていくうちに時間はあっという間に過ぎていった。

「よし、今日はこの辺にしとけ」

幹部が腕時計を見ながら云ったので、同じように自身のを見てみると短い針は10を指そうとしていた。

「ありがとうございました」
「いえ…お疲れ様でした」
「A、行くぞ」
「あ、はい。失礼します」

中原幹部に続いて射撃場を出る。

『行くぞ』と云われたのでとりあえず付いて行ってはいるが、またしても目的は判らない。
すると幹部が何処からか1枚の写真を取り出して私へ見せた。今朝、額を撃ち抜いた男の遺体だった。

「コレ、手前だろ」
「はい、そうですが」
「矢ッ張りな」

納得したような顔をした幹部は、『どうしてそれを？』と訊く間もなく話を続ける。
どうやら、今朝の件の現場資料と報告書を見たらしい。

「死んだのが爆発後なのは判る。どう見ても損傷が少ねえからな。黒蜥蜴で拳銃使いなんて立原ぐらいしか知らなかったから、本人に訊いてみたが自分じゃねえと云う。そしたら手前が撃鉄で親指を怪我したって云ってたのを思い出した」

「それで、私だと判ったと…」
「嗚呼。さっきので腕も確かだと判ったしな」
「お褒めに預かり光栄です」

「主に使ってるのは散弾銃(ショットガン)なンですけどね」と付け足すと、「尚更すげェじゃねえか」とまた褒められた。
中原幹部ほどの人に褒められるなンて、素直に嬉しい。

幹部はこれから呑みに出るそう。(おそらく立原達の輪に加勢する)

去り際に「またな」と云った幹部の表情がいやに脳裏に残った。

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