【文スト】きっと純愛 (ページ37)

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きっと其の三十七ページ37

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「今まで隠していたことを謝りたい。結果、君の心身に負担をかけてしまった」
「いえ、謝らないでください。私が非力なのです」
「そんなことないだろう。実際、今回君は新しい力を手に入れた」

それはあの"異能力"のことでいいのだろうか。
『鏡の国のアリス(Alice in MirrorLand)』、まだ何も判らないあの力のことで。

「まだ1度だけですし、これから思うように遣えるかは判りませんが…」
「それは君次第だね。それも含めて、A君に提案があるのだけど＿＿＿」

『提案』という言葉に生唾を飲む。この人の云う提案とは即ち、私にとって『命令』だ。
一体何を云われるのか、落ち着いたと思った心臓がまた強く音を立てる。

「中也君の下に着く気はないかね？」
「中原幹部の下に、ですか？」

そういえば、前に幹部に同じ誘いを受けた後、その答えを出していないことに今更気づいた。
幹部から答えを尋ねられる事も無かった為、揶揄われただけなのだと思っていたのだが。

しかし、2つ返事で答えられる提案ではない。前と同じ葛藤が胸の内でせめぎ合う。

そのとき、奥の扉がバーンと放たれ、金髪碧眼の可愛らしい女の子が現れた。……ああ、これが噂の。

「エリスちゃん！どうしたの？今は少し……」
「別にリンタロウには会いに来てない！チュウヤに会いに来たの！それなのに……チュウヤは何処なの？！」

不服そうに頬を膨らませる様はとても愛らしい。こんな幼子までが好くとは、幹部の人気も幅広いなと感じた。

「チュウヤがいないならもういいわ。じゃーね」
「エリスちゃん機嫌直してよ、後で私が遊んで…」
「リンタロウだけはイヤ！！」

まるでお笑い芸人のコントの様なやり取りに、先程のシリアスさは吹き飛び、思わず笑いそうになる始末だ。お願いだからやめてほしい。だいぶ拷問である。

「……と、いうわけだ。今すぐに返事を求めるのは酷だろうし、幾らか考える時間をあげよう」

答えが決まったらまた此処へ来ていいから、と締め括られ、首領との謁見は終わった。

挨拶をし、部屋の外へ出るとポケットへ入れていたスマホへメールが入っていた。
差出人は……中原幹部だ。

『少し話がしたい。久しぶりに2人で呑みに行かねえか？』

メール画面を閉じて、私は電話帳を起動した。

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